(1)太平洋側沖合などのプレート境界付近で発生する地震

フィリピン海プレートは、九州・沖縄地方の太平洋側沖合にある南海トラフおよび南西諸島海溝から、九州・沖縄地方の下に沈み込んでいる(図9−4)。

 太平洋側沖合から沿岸部にかけてのプレート境界付近で発生する地震は、沈み込むフィリピン海プレートと陸側のプレートがその境界でずれ動くことにより発生するプレート間地震と、沈み込んだフィリピン海プレートの内部に発生するやや深い地震に分けられる。

1)フィリピン海プレートの沈み込みによるプレート間地震

 日向灘周辺で発生するM7程度の地震の多くは、フィリピン海プレートの沈み込みによるプレート間地震である。例えば、日向灘で発生した1961年(M7.0)、1968年(M7.5)および1984年(M7.1)などがある。この地域では、このようなM7程度の地震が十数年から数十年に一度の割合で発生しているが、M8以上の巨大地震が発生したという記録はない。日向灘周辺で発生する地震では、周辺の沿岸各地に地震動による被害のほか、震源域が浅い場合には、津波被害が生じることがある。

 南西諸島海溝付近で発生した顕著な被害地震の多く、例えば、1771年の八重山地震津波(M7.4)、1911年の奄美大島近海の地震(M8.0)などは、観測網が無かったり不十分であった時代の地震であり、これらがプレート間地震であったかどうかは分からない。いずれにしろ、南西諸島海溝の近くで起こる大地震は、津波を伴うことが多い。なお、1771年の八重山地震津波は、海底での大規模な地滑りによって発生したとの説{5}もある。

2)沈み込むフィリピン海プレート内の地震

1995年10月の奄美大島近海の2つの地震(M6.6、M6.5)は、海溝近くのやや深いところ(20〜40km)で発生した、沈み込むフィリピン海プレート内の地震である。これらの地震は、沈み込んだフィリピン海プレートが割れるような正断層型の断層運動によって発生したものであり、津波を伴った。さらに、南西諸島海溝付近で発生した過去の被害地震のうちにも、1911年の奄美大島近海の地震(M8.0)など、このタイプの地震であった可能性が指摘されている{6}ものもある。

 陸側に深く沈み込んだプレート内でも稀れに規模の大きな地震が起こることがある。この場合、被害は広い範囲に及ぶことが多く、例えば、1909年の宮崎県西部の深さ約150kmで発生した地震(M7.6)では、遠く岡山や広島県での被害も知られている。