海溝 → プレートテクトニクス の項参照
活断層調査(法)
強震動 → 地震動 の項参照
巨大地震 → マグニチュード の項参照
地すべり → 土砂災害 の項参照
斜面崩壊 → 土砂災害 の項参照
震央 → 震源・震源域 の項参照
震源 → 震源・震源域 の項参照
震源域 → 震源・震源域 の項参照
前震 → 前震・本震・余震 の項参照
大地震 → マグニチュード の項参照
断層運動 → 断層 の項参照
地下構造調査→ 活断層調査 の項参照
地形調査→ 活断層調査 の項参照
津波 → 津波・(津波の)波源域・津波地震 の項参照
津波地震 → 津波・(津波の)波源域・津波地震 の項参照
土石流 → 土砂災害 の項参照
トラフ → プレートテクトニクス の項参照
トレンチ調査 → 活断層調査 の項参照
軟弱地盤 → 地盤 の項参照
日本海東縁部 → プレートテクトニクス の項参照
波源域 → 津波・(津波の)波源域・津波地震 の項参照
伏在断層 → 活断層 の項参照
プレート間地震・プレート内地震 → プレートテクトニクス の項参照
噴砂現象 → 液状化現象 の項参照
本震 → 前震・本震・余震 の項参照
本震−余震型の地震 → 前震・本震・余震 の項参照
陸域の浅い地震 → 活断層 の項参照
ゆるく堆積した砂の地盤に強い地震動が加わると、地層自体が液体状になり建物などを支える力を失う現象。
液状化が生じるためには、強い地震動の他に、地層が水を多く含んでいること、ゆるく堆積した砂であることなどの条件が必要である。これらの条件がそろった液状化が発生する可能性が高い場所は、地下水位が高い砂地盤で,例えば、埋立地、干拓地、昔の河道を埋めた土地、砂丘や砂州の間の低地などがあげられる。
液状化が生じると、砂の粒子が地下水の中に浮かんだ状態になり、水や砂を吹き上げたりする(噴砂現象:図2−25参照)。建物を支える力も失われ(図6−28参照)、比重の大きいビルや橋梁は沈下したり、比重の小さい地下埋設管やマンホールなどは浮力で浮き上がったりする(抜け上がり現象:図3−11参照)。やがて、水が抜け去ると、砂は締めかたまり、もとの状態かもう少ししまった状態になって、支持力を回復する。液状化の一連の過程を付図1−1に示した。
また、液状化した地層が側方に大きくずれ動き、盛土の崩壊や地滑り、護岸のはらみ出しや沈下などの現象も生じる。このように、液状化災害は人口の集中した平野部で起こる地盤の災害であり、道路やライフラインの災害など、都市型災害として大きな影響を国民生活に及ぼしやすい。
また、遺跡発掘調査現場などで液状化した砂の地層やその砂が上の地層を切って吹き出した噴砂の跡などが発見されることがある(付図1−2)。遺跡の発掘現場では各地層の年代が詳細に把握されていることが多いことから、歴史の資料に記述されている地震の記録などと照らし合わせて、過去の地震の研究に貴重な手がかりを与えることになる。
関連する用語:沖積層、地盤、地震動、土砂災害、歴史の資料によって知られている地震
付図1−1:液状化のメカニズム
付図1−2:大阪府門真・守口市の西三荘・八雲東遺跡の液状化跡
活断層の存在は、専門家が空中写真からその証拠を読みとることにより認定されることが多いが、断層活動そのものの特徴やその場所の地形的な性質により,活断層の現れ方は様々であり,地形からの判断だけでは,それが活断層であるかどうか,はっきりしないことがある。そのような場合には、各断層についてそれが活断層であることの確からしさを,確実度によって示す。活断層の確実度は、確からしい方から次の三つに分類される。
確実度Tは、断層の位置・ずれの向きがともに明確で、地形的特徴から活断層であることが確実なもの。
確実度Uは、断層の位置・ずれの向きは推定できるが、地形やごく新しい時代の地層が繰り返しずれていることを示す確実な証拠に欠けるなど,確実度Tとするには十分な資料に欠けるもの。
確実度Vは、活断層である可能性はあるが、ずれの向きが不明であったり、河川や海の浸食作用など他の原因で形成された疑いが残るもの。
本書では、確実度Tと確実度Uの活断層を地図に表示している。
関連する用語:活断層、(活断層の)活動度、(活断層の)活動間隔、活断層調査
活断層とは、最近の地質時代に繰り返し活動し、将来も活動することが推定される断層のことである。最近の地質時代としてどこまでさかのぼるかであるが、「新編日本の活断層」では、第四紀(約200万年前から現在までの間)に動いたとみなされる断層を活断層と定義している。しかし、さかのぼる年代を数十万年前位とする研究者もいる。
活断層の存在は、その活断層が繰り返しずれた跡が地形(図2−21参照)や地層に残されていることにより確認される。新しい時代に形成された地形や地層に比べて,古い時代に形成された地形や地層ほど大きくずれていれば,繰り返しずれを生じた証拠と考えられる。古いものほど地震を多数回経験しているので,大きくずれているからである。そしてまた,今後も同じようにずれを繰り返して地震が発生すると考えられる。
活動が活発な活断層は、その活動の繰り返しによってずれが累積するため,盆地・平野などの低地と山地の境界を形成する。したがって,活断層はこのような大きな地形の境界の周辺に見つかることが多い。なお、M7程度より大きい陸域の浅い地震は、活断層で発生することが多い。
また、沖積層が厚く堆積している地域などでは、地下にこれまで繰り返し活動してきた断層が存在しても、繰り返しの断層運動により累積したずれが、必ずしも地表には現れない。このような断層を伏在断層という。
陸域の浅い地震が今後起こる可能性を評価するには、一つ一つの活断層の性質(どのくらい活発なのか:活動度、一回の地震に伴ってどれだけのずれが生じるのか、どのくらいの時間間隔で活断層が活動するのか:活動間隔、最近の活動はいつなのか等)を知ることが重要である。これらの情報を得るために、最近の活断層調査では、地形的な調査だけでなく、直接活断層を掘るトレンチ調査が行われることが多い。
関連する用語:(活断層の)活動度、(活断層の)活動間隔、(活断層の)確実度、活断層調査
陸域の活断層で発生する地震の発生間隔はおおよそ1,000年またはそれ以上であるために、歴史の資料のみから活断層の活動歴を調べることは困難であり、どうしても有史以前の資料が必要である。そのための活断層の調査方法としては、地形調査、トレンチ調査、地下構造調査などがある。一般的にいえば、はじめに空中写真を用いた地形調査を行い断層の位置・確実度を確かめ、さらにその断層で過去どのように地震が発生したかをトレンチ調査によって調べる。そしてさらに、その断層の深部の形態を知るために、地下構造調査を行う。
(地形調査)
活断層に沿って、断層運動の繰り返しによって生じた土地のずれや特殊な地形(断層変位地形という:図2−21参照)が認められることが多い。空中写真を用いた地形調査では,二枚の空中写真を使って立体的に地形を観察して,地形の微妙な起伏や食い違いを詳しく読み取り,断層運動の繰り返しによってできた地形を見つけだす。
空中写真による調査のほかに,現地での調査も重要である。現地では,ずれている地形の詳しい測量をしたり,地形をつくっている地層や断層が露出している崖などの観察を行ったりする。活断層の活動度を求めるためには、活断層によりずれている地層や地形がいつ作られたものなのかを知る必要があり、そのための試料等も採取する。
地層や地形がいつ作られたかは、地層に含まれる有機物の放射性炭素の年代測定や、地形を覆う火山灰(火山灰は火山の大規模な噴火の時などごく短い期間に堆積するので、年代を決める良い指標になる)などから求められる。
(トレンチ調査)
断層を横切るようにトレンチ(調査溝)を堀り地層を観察して、活断層の過去の活動歴を調査する最も直接的な調査方法(図2−24参照)。
掘削によって露出した地層のずれの量やその地層の年代に関する情報を入手し、長期間にわたる過去の活動時期・活動間隔・ずれの量を明らかにして、地震の規模・時期などの今後の活動予測の資料とする。
(地下構造調査)
トレンチ調査では通常深さ数mまでの地層の情報が得られるが、それより深い地下の断層の形態や位置を知るためには、様々な地下構造探査技術が用いられる。その中では弾性波探査及びボーリング調査が多く用いられる。地表では活断層が認められない場所でも、地層の食い違いの量と場所を推定するために、地下構造調査が行われることがある。地下構造探査により、トレンチ調査では分からない地下深部の構造や、海底下・川底の様な場所でも断層に関する情報を得ることができる。
関連する用語:活断層、(活断層の)活動度、(活断層の)活動間隔、(活断層の)確実度、歴史の資料によって知られている地震
活断層の活動間隔とは、一つの断層または断層帯のある部分が繰り返し活動する時間間隔、すなわち地震の繰り返し間隔のことである。大雑把にいえば、活動度A級の活断層の平均活動間隔は千年〜数千年程度、活動度B級の活断層のそれは約1万年程度である。
関連する用語:活断層、(活断層の)活動度、(活断層の)確実度、活断層調査
活動度とは,活断層の活動の活発さの程度であり、その活断層が長期間にずれを累積してきた平均的な速さ(これを平均変位速度と呼ぶことがある)により表される。
地形(あるいは地層)が形成されてから現在までの時間(T),活断層で繰り返し地震が起こり,その結果,地形あるいは地層のずれの量が,Dの値となったとすれば,活断層のずれの平均的な速さ(S:平均変位速度)は、以下のように表される。
S=D/T
なお,活動度を簡便に表すため,ずれの平均的な速さから活断層をA〜Cのランクに分けて表現することが多い。
活動度A級の活断層は、1,000年あたりの平均的なずれの量が1m以上10m未満、
活動度B級の活断層は、1,000年あたりの平均的なずれの量が10cm以上1m未満、
活動度C級の活断層は、1,000年あたりの平均的なずれの量が1cm以上10cm未満。
1000年あたりの平均的なずれの量が10m以上の活断層は、日本の陸域では知られていない。日本では、活動度A級の活断層は約100、活動度B級の活断層は約750、活動度C級の活断層は約450知られている。活動度C級の活断層はずれの平均的な速さが小さいので、地形に残された累積したずれが、その後の侵食によって不明瞭になっていることが多い。そのため、実際に存在する活動度C級の活断層は、もっと多い可能性がある。
関連する用語:活断層、(活断層の)活動間隔、(活断層の)確実度、活断層調査
前震・本震・余震の区別がはっきりせず、ある地域に集中的に多数発生するような地震群を群発地震と呼ぶことがある。(前震−)本震−余震型の地震活動の場合は、余震の回数は時間とともにある程度規則的に減少するが、群発地震活動の場合は、消長を繰り返しながらやがて収まっていくというような活動をする。
群発地震活動の中で、個々の地震の規模は、M6より大きくなることはまれであるが、M5程度の地震が発生して局所的に被害が生じることがある。過去の例としては、1965年から数年間続いた長野県の松代群発地震が有名で、有感地震は6万回を超えた。この群発地震で最大の地震のマグニチュードはM5.4であった。最近では、伊豆半島東方沖で、しばしば群発地震が発生している。群発地震は、火山の周辺で発生していることが多いが、火山との関係について、はっきりとしたことはまだ分かっていない。
なお、群発地震については、被害がなくても、本報告書の主な被害地震を示している図に図示している場合がある。
関連する用語:前震、本震、余震
地震により生じた地面の揺れのことを地震動と言う。地震動には、揺れが大きい・小さい、周期が長い・短い、揺れている時間が長い・短いなど、いろいろな性質がある。それぞれの性質によって違いはあるが、一般に地震動が強くなると、家屋の倒壊、地盤の液状化現象、山崩れや地すべりなどが発生し、被害が生じることがある。
地震動は、一般に震源域に近いほど強いが、震源域から離れていても地盤が軟らかいところでは、強い地震動が生じることがある。また、地震動の強さは、断層運動の進行方向やずれの量、地下構造などにも影響される。例えば、1995年の兵庫県南部地震では、断層運動の進行方向や神戸市付近の地下構造によって局所的に地震動が強くなり、それが被害を大きくした一因と考えられている。(本文2−5(1)参照)
なお、強い地震動のことを強震動と呼ぶ。また、地震動の強弱を表す数字のひとつに震度がある。
プレート境界に沿って繰り返し発生するプレート間地震などは、長い期間を見ると、震源域がある列状に配列する。このような地震が、いくつか発生した場合、まだ地震が発生せずに残されている領域では、将来地震が発生する可能性がある。本報告書では、その領域のことを地震の空白域と呼ぶ。
関連する用語:震源域
地震のときに岩盤がずれ動くことによって、地中に振動が生じ、周囲に波として伝わっていく。この波のことを地震波と言う。地震波が地表に到達し、地面が揺り動かされることによって、我々は地震の揺れ(地震動)を感じる。
地震波は、地中を伝わる実体波と地表面を伝わる表面波に分けられる。実体波は、さらにP波とS波の二つに分けられる。P波は縦波(波の進行方向と同じ方向に振動する波)であり、伸び縮みが伝わっていく。縦波の例としては音波がある。S波は横波(波の進行方向に対して垂直な方向に振動する波)であり、ねじれが伝わっていく。また、表面波は、池に石を落としたときに水面にできる波のように、地表面を伝わっていく。
我々が地震の揺れを感じるときは、まずP波によりガタガタと上下方向の小刻みな揺れを感じた後、S波によりゆさゆさと横方向の揺れを感じる。P波がS波よりも速く伝わる(約1.7倍)ためである。P波とS波の到達時間の差(初期微動継続時間とも呼ばれる)から、震源までのおよその距離が分かるので、震源の決定に利用されている。
関連する用語:地震動、震源
土木構造物の基礎になったり、工事の対象になる地球の表層部分をさす言葉。地盤は固結の程度によって、固結地盤(岩盤)、半固結地盤、未固結地盤(土)に分けられる。また、盛土や埋立地は人工地盤と呼ばれる。
非常に柔らかい粘土や緩い砂からなる地盤は軟弱地盤と呼ばれ、建造物の基礎としては建物などを支える力が不足し、すべり破壊や地盤沈下等の障害が発生しやすい。また、地震による液状化、不同沈下なども起こしやすい。
日本で軟弱地盤を構成する主なものは、最も新しい地層である沖積層で、海岸平野、河川背後の低湿地や台地や丘陵地を刻む浅い谷などに分布している。また、埋め立て造成地盤も軟弱地盤として扱われる。
GPS( Global Positioning System、汎地球測位システム)は、人工衛星を利用して位置を求めるシステムで、もともとアメリカ合衆国が航空機や船舶などからその位置を知るために開発したシステムである。地上約2万kmを周回する24個の人工衛星(GPS衛星)のうち4個以上の衛星からの電波を同時に受信し、それぞれの衛星の位置と受信した時刻から受信した位置が求められる。この方法は、現在カーナビゲーションでも利用されている。さらに、複数の地点での受信データを比較することにより、相互の相対的な位置を決定する手法が開発され、非常に高い精度で距離の測定ができるようになった。その精度は、100万分の1から1000万分の1以上(10km当たり1cmから1mmの誤差)である。これを利用することにより、広域の地殻変動を高精度で連続的に検出することが可能になり、長い期間と多くの労力を必要とする従来の測量に代わって活用されている。
なお、日本では、広域の地殻変動を連続的に観測するため、国土地理院などが平成9年3月末現在で全国に約1,000点の連続観測点(電子基準点)を設置し、効率的に連続観測を行っている。
関連する用語:地殻変動
地震とは地下の岩盤の破壊現象であり、一般にはある面(断層面)に沿って、その面の両側の岩盤が急激にずれ動く現象である。この「ずれ」は、ある点から始まって周囲に面状に広がっていく。最初に「ずれ」が始まった点を震源と言い、「ずれ」が生じた範囲全体のことを、本報告書においては震源域と言う。主な被害地震を示した図などに示した震源あるいは震源域は、それらを地表に投影したものである。なお、震源の直上の地表の点は震央(しんおう)と呼ばれることがある(付図1−3)。
このように「地震が生じたところ」は、点ではなく、面的な広がりを持ち、マグニチュードが大きくなるほど震源域は広くなる。例えば、震源域の広がりを見ると、M8程度の巨大地震では、幅数十km以上、長さ100km以上に及ぶことがあるが、M4程度の地震では、幅、長さともに1km程度である。
震源は地震波の観測から即座に求めることができるが、震源域の推定には時間がかかる。震源域は余震の分布、津波の波源域、地表に現れた断層などから推定されている。
本報告書の図中の震源域は、原則として、陸域にかかる地震については断層モデル、海域の地震については津波の波源域を示している。陸域の地震の震源域については、断層が垂直に近いことが多いため、地表面に投影した場合、実際の震源域の大きさより狭く見える。逆に、津波の波源域は津波が発生した範囲を示すので、地下の震源域の地表面への投影より広くなりがちである。
付図1−3:震源・震源域
震度とは、地震による地面の揺れ(地震動)の強さの程度を表す量である。地面の揺れの強弱は地震被害と密接な関係があるので、震度は地震防災上重要な情報として活用されている。現在日本では、震度計を用いて観測され、地震発生後、すぐに気象庁から発表される。揺れの弱い方から順に、0、1、2、3、4、5弱、5強、6弱、6強、7の10段階で表される気象庁震度階級が用いられている。また、気象庁では、ある震度が観測された場合、その周辺で実際にどのような現象や被害が予想されるかを表にしている(参考資料1)。
日本では、1880年代から震度の観測が行われており、1991年に震度計が導入される以前は、人間が感じた揺れの強さや被害の状況などを基に震度が判断されていた。震度階級は何回か改正されており、現在の震度階級は平成8年10月から用いられている。それまでは、震度0〜7までの8階級の震度階級が用いられていた(参考資料2)。また、震度の観測が始まるより前に発生した地震の震度は、被害状況などから推定されている。
震度を求める震度計は、地面の揺れの強さを数値化する器械である(参考資料3)。震度計では、人が従来決めた震度とほぼ一致する数値が得られる。計算により得られた数値を計測震度と言い、計測震度の小数点以下を四捨五入して整数にしたものが、震度となる。なお、震度の5及び6については、表れる現象や被害に幅があることから、5弱と5強、6弱と6強の階級に分けられている。震度の計算には地面の揺れの加速度、周期、継続時間が複雑に関係している。震度7の下限である計測震度6.5に対応する加速度は、周期が0.1秒のとき約2,700ガル、周期が2.0秒のとき約530ガルである(この値は継続時間が十分長いときの3成分合成値である)。
(注)本報告書では、平成8年9月以前の地震については、それまでの震度階級(参考資料2)に基づいて記述されている。
関連する用語:マグニチュード
※参考資料1(気象庁震度階級関連解説表)
参考資料2(気象庁震度階級(1949))
参考資料3(震度階級を定めた気象庁告示)
一般に、地震が発生すると、その地震が発生した場所で、それより小さい地震が多数発生する。最初の地震を本震、それに続く小さな地震を余震と言う。余震の回数は、本震の直後には多いが、ある経験式に沿って、時間とともにある程度規則的に減少する。本報告書の本文中のところどころにある「余震は順調に減少した」という記述は、その経験式に沿っていることを示す。余震の規模は本震のマグニチュードより1程度以上小さいことが多いが、本震の規模が大きい場合は、余震でも被害が生じる場合がある。なお、余震のうち最大の規模を持つ地震を最大余震、余震が分布している領域を余震域と呼ぶ。また、余震の多くは本震の震源域の中で発生し、特に本震の直後(数時間から1日程度の間)の余震の分布は、本震の震源域をよく表している。
各地方の被害地震の例で掲載した余震回数の推移を示すグラフでは、余震回数として、ある観測点で観測した回数(有感の場合には、揺れを感じた回数)を示した場合と、気象庁の地震観測網により観測された地震数を示した場合がある。気象庁の地震観測網により観測されている場合には、どこかの観測点で有感であった場合に、有感余震としている。
本震が発生するより前に、本震の震源域となる領域で地震が発生することがあり、それを前震と言う。前震は、規模も小さく数も少ない場合が多いが、かなり多数発生して被害を及ぼすこともある。また、前震は本震の直前〜数日前に発生することが多いが、一ヶ月以上前から発生することもある。ただし、本震が発生するより前に、ある地震が前震であるかどうかを判断することは、現状では難しい。
上記のうち、本震と余震のみの地震活動を本震−余震型、前震も発生している場合は、前震−本震−余震型の地震活動と呼ぶ。
なお、前震・本震・余震の区別がはっきりせず、ある地域に集中的に多数発生するような地震群を群発地震と呼ぶことがある。(群発地震の項参照)
関連する用語:震源域、群発地震
地層を観察すると、元はつながっていた地層がある面を境に食い違っていることがある。このような食い違いの構造を断層と呼び、その食い違いの境界面を断層面という。
地震とは、断層面に沿ってその面の両側の岩盤が急激にずれ動く現象(断層運動)である。一般に「ずれ」はある一点から始まり断層面に沿って周囲に広がっていく。この急激な断層運動によって、地下に蓄えられていた歪みのエネルギーが放出される。地震の原因となった断層は多くの場合は地表では観察されないが、陸域の浅いところでM7程度より大きい地震が発生した場合には、地下の断層の一部が地表に現れて、地表にずれが生じることが多い。
断層は、ずれの方向により、縦ずれ断層と横ずれ断層に分けられる(付図1−4)。更に、縦ずれ断層は正断層と逆断層に、横ずれ断層は右横ずれ断層と左横ずれ断層に分けられる。実際の断層を見ると、付図1−4の様な純粋なものは稀で、縦ずれと横ずれの混じったものが多い。
このような断層のタイプはそこに働く力の状態と密接に関係している。一般的に、逆断層や横ずれ断層は水平に圧縮される力がかかっているところで、正断層は水平に引っ張られる力がかかっているところで発生することが多い。日本付近では、プレートの運動により圧縮されるような力を受けているので、逆断層や横ずれ断層がよく見られるが、別府−島原地溝帯では正断層が見られる。
付図1−4:正断層、逆断層、横ずれ断層(右横ずれ、左横ずれ)
地球の内部構造を見ると、まるで卵のような構造をしている。卵の殻にあたる地球の一番外側の部分を地殻、白身にあたる部分をマントル、黄身にあたる部分を核と呼ぶ。
地殻の厚さは、大陸では30〜40km、ヒマラヤなどの大山脈の下では50〜60kmであるが、日本では30km前後である。また、海域の地殻の厚さは通常10km以下である。どちらにせよ、半径約6,370kmの地球全体から見れば、地殻は地球表面の非常に薄い層である。
マントルは、地殻の下から核の上(深さ約2,900km)までの間の部分にあり、体積にして地球の約83%を占めている。マントルの中は一様ではなく、通常三つの層に分けて考えており、一番地殻に近い層を上部マントルと呼ぶ。
地殻は、マントルに比べて比較的壊れやすい性質を持っているので、陸域の浅い地震は地殻の中で発生している。なお、プレートテクトニクスで用いられるプレートとは、地殻と上部マントルの一部を指し、その厚さは数十kmほどである。(プレートテクトニクスの項参照)
関連する用語:プレートテクトニクス
地球の表面を構成する地殻には、さまざまな力が加わり、さまざまな変動が生じている。本報告書では、この変動を地表面の変形として捉えたものを地殻変動という。地殻変動にはさまざまなタイプがあり、地質学的な長期間に亘って山脈が隆起したり、平野が沈降したり、プレートが移動するようなものから、短時間に生じる地震時の変動など、さまざまな時間的・地域的スケールを持つものがある。
広域の地殻変動の検出は、従来から平面位置を求める測量(三角測量など)や高さを求める測量(水準測量)によって行われていた。また、海水面の高さを求めることにより海岸の隆起や沈降を長期的に観測することも行われている。本報告書では、地域別に従来の測量結果を解析して求めた地殻の伸びや縮みを図示した。最近では、効率的でほぼ連続的に実施できるGPS観測などによっても広域の地殻変動が観測されている。このほか、地下のトンネルなどを利用して地面の伸び・縮みや傾きの変化の精密な観測も行われている。
関連する用語:GPS
現在の河川や海の働き(堆積作用)により形成された地層,すなわち最も新しい地層のこと。主に固まっていない泥,砂,石などからなり,低地(沖積平野)を形成している。
沖積層の形成過程は、以下のとおりである(付図1−5)。約18,000年前に海面が最も低下した時期があり、その時期に河川が侵食して深い谷を形成した。その後の海面上昇によりこの谷は堆積物に埋められた。その堆積物が沖積層である。
沖積層は、一般にその下にある古い地層(基盤)に比べ軟弱で、地震に対する危険度も高い。沖積層の厚い(30m程度以上)ところは、地震の際地震動が増幅されやすく、また、構造物の不同沈下や液状化などの地盤災害を起こしやすい。
沖積平野は日本全土の約13%にすぎないが、日本の主要な都市は沖積平野に集中している。そのため、軟弱地盤対策が我が国の地震防災の基本的課題となる。
付図1−5:沖積層の形成過程
津波とは、海底の地形が急に変わることによって、海面に生じる波のことである。風波などと異なり、周期が長く、10〜20分程度のことが多いため、海岸などでは波と言うよりは、潮の異常な干満のように見えることが多いが、その速度は後述のように非常に早い。津波の原因は、海底下の浅いところで発生した地震による海底の隆起や沈降が主なものであるが、まれに海底火山の噴火、海底地すべり、海岸近くの山崩れの場合もある。なお、津波が発生した領域、すなわち、津波の原因となる海底の隆起や沈降を起こした領域を津波の波源域と呼ぶ。波源域は、地下の震源域の地表面への投影よりは広くなりがちである。
津波の高さは、沖合では比較的小さいが、水深が浅くなるにしたがって大きくなり、沿岸の地形の形状によってさらに増幅されることがある。三陸沖で発生した1896年や1933年の地震による津波災害(それぞれ明治三陸地震津波、三陸地震津波と呼ばれる)は有名であり、津波の高さは20mを超えたところがある。また、1960年のチリ地震津波のように外国で発生した大きな地震による津波が日本に被害を及ぼすこともある。
津波が伝わる速さは、水深が深いほど速く、例えば水深4,000mの外洋では秒速200mにもなる。それに比べ、海岸近くの浅いところでは秒速10m前後と遅くなるが、それでも人間が走る速さよりも速い。
津波地震とは、単に津波を伴う地震を意味することもあるが、断層が通常よりゆっくりとずれて、人が感じる揺れが小さくても、発生する津波の規模が大きくなるような地震を意味することが多い。本報告書では後者の意味で用いている。津波地震の例としては、1896年の明治三陸地震津波を引き起こした地震が有名である。
関連する用語:震源域、断層
地震動により、山崩れ等の土砂移動が生じ、人命や建物などに被害を及ぼすことがある。
一般に降雨による斜面崩壊は、表層物質が厚く堆積して、周りから水を多く集める(集水面積の大きい)凹型の斜面で発生することが多いが、地震動による斜面崩壊は、振動が集中しやすい凸型の斜面で発生することが多い。また、地震がきっかけとなって山体そのものが大崩壊することがある。1984年の長野県西部地震(M6.8)による御岳崩れや、1792年の島原半島の地震(M6.4)による眉山の崩壊などが有名である。造成地などでも、傾斜した部分で崩壊等が発生することが多いが、地震動が増幅されやすい盛土で発生することが多い。
山腹で崩壊した大量の土砂が谷の堆積物や水を含んで土石流となって流下し、大きな被害をもたらすこともある。また、斜面崩壊や土石流などが発生した場合、河川のせき止め、決壊による二次災害が発生する場合もある。1847年の善光寺地震(M7.4)では山崩れにより犀川が堰き止められ湖が形成され周辺地域が水没するとともに、その後湖の縁が決壊して下流域に甚大な被害が生じた。
地すべりは緩やかな斜面で広い範囲がゆっくりと滑り下る現象であるが、地震動が引き金となって地すべりが発生することがある。兵庫県南部地震でも地すべりが生じたが、神戸側の丘陵地域では、地すべりに伴う亀裂により局所的な被害が生じた。
斜面崩壊や地すべりなどは、地震動や降雨などが原因となって引き起こされるが、地域的な地質、地形、地下水の状況などの自然的な要素がその発生の下地になっている。なお、斜面崩壊や地すべりなどは、本震後の余震や降雨などにより発生することもあるので、本震発生後も注意を必要とする。
関連する用語:地震動
被害の種類や程度に係わらず、何らかの被害を及ぼした地震を、本書では被害地震としている。被害地震はM6.5程度以上のことが多いが、震源の深さがごく浅い場合や、震央付近の地盤が悪い場合などは、M5程度でも被害地震となることがある。また、被害が生じた場所の震度は通常震度5弱以上である。
プレートテクトニクスとは、地球の様々な変動の原動力を地球の全表面を覆う十数枚の厚さ数十kmほどの岩盤(プレート)の運動に求め、そのプレートの境界部に様々な変動が生じることにより、地震や火山をはじめとする様々な地学現象を統一的に解釈しようという考え方であり、1960年代の後期に登場した。
プレートはそれぞれ別々の方向に年間数cm程度の速さで移動している。したがって、それぞれのプレート境界では、プレートが離れ合ったり、近づき合ったり、あるいはすれ違ったりする(図2−16参照)。プレートが離れあう境界では、大西洋中央海嶺や東太平洋海膨などの海底山脈が形成され、その中に大きな裂け目が形成される。近づき合う境界では、プレート同士が衝突して山脈が形成されたり、一方が他方に沈み込んで、海溝や弧状に配列した島々(弧状列島と呼ぶ:アリューシャン列島、千島列島、日本列島、南西諸島などがその例)が形成される。すれ違いの境界は、トランスフォーム断層と呼ばれる横ずれ断層である。このように、プレート境界部は、種々の変動の舞台となり、地震や火山も主にプレート境界に沿って分布する。プレートの境界部以外は安定しており、変動の少ない安定した大陸や大洋底を形成している。
日本列島とその周辺は、複数のプレートが互いに近づき合っている地域で、太平洋プレート、フィリピン海プレート、そして陸側のプレートと最低3つのプレートがあるとされている(図2−17参照)。太平洋プレートは、ほぼ東南東の方向から年間8cm程度の速さで日本列島に近づき、千島海溝、日本海溝で陸側のプレートの下に、伊豆・小笠原海溝でフィリピン海プレートの下に沈み込んでいる。フィリピン海プレートは、ほぼ南東方向から年間3〜7cm程度の速さで日本列島に近づき、相模トラフ、駿河トラフから南海トラフ、さらに南西諸島海溝で、陸側のプレートの下へ沈み込んでいる。
プレートが沈み込む海溝やトラフの付近では規模の大きな地震が発生することがある。このような大地震は、海洋側のプレートの沈み込みに伴って陸側のプレートの端が引きずり込まれ、やがてそれが限界に達したときに陸側のプレートが跳ね上がる、という断層運動により発生する(図2−19参照)。このような地震をプレート間地震またはプレート境界型地震という。断層長が100km以上に達するときにはM8程度の地震になる。
海溝などから沈み込んでいくプレートの内部で大規模な破壊が発生し、大地震が起こることもある。また、ある程度沈み込んだプレートの内部で破壊が起こると深い地震が発生する。これらを沈み込むプレート内の地震という。また、プレートの沈み込みに伴って周囲にかかる力によって、沈み込むプレート境界から少し離れたところで、陸域の浅い地震である陸域のプレート内地震が発生する。
なお、東北日本の日本海東縁に沿ってプレートの境界があるとする説(図2−1参照)も出されており、近年ここでは大きな地震が南北方向に連なるように発生している。また、南西諸島の北西側では、陸側のプレート(東シナ海)が南西諸島の列に直交する方向に引っ張られるような力が加わっており、沖縄トラフと呼ばれるやや浅い溝状の地形が形成され(図2−7参照)、いくつか地震が発生している。
(テクトニクス)
地下の構造を造りだすような運動、造構造運動に関する学問のこと。変動論とも呼ばれる。
(海溝・トラフ)
細長い深海底の溝状の地形。両側の斜面が比較的急で、水深は通常6,000m以上のものを海溝と呼ぶ。海溝に比べ浅く、幅が広いものを、トラフ(舟状海盆)と呼ぶ。
一般的には、プレートの沈み込み帯にあたり、山脈や弧状列島に沿って形成されている。トラフは、地形的な特徴が海溝ほど顕著ではないが、構造・成因など基本的には海溝と同じである。ただし、沖縄トラフのように、大陸性の地殻が引っ張られて形成される溝状の地形もある。
震度が地震による地面の揺れ(地震動)の強さを表すのに対し、マグニチュードは、地面の揺れを引き起こした原因(震源)そのものの規模を表す量である。そのため、1回の地震でも、震度は場所によって変わるが、マグニチュードは変わらない。また、テレビ、新聞などでは「地震の規模を表すマグニチュード」と表現されることがある。
マグニチュードは震度のように直接観測できないので、各地の揺れの大きさなどから推定される。マグニチュードが大きいほど地震の規模が大きいことを示しており、マグニチュードが1大きくなると地震のエネルギーは約30倍大きくなるという関係がある。
マグニチュードは、しばしばMというローマ字で表される。本報告書では、例えば、「1995年の兵庫県南部地震(M7.2)は、・・・」などと用いている。
また、一般にM8程度以上の地震を巨大地震、M7以上の地震を大地震と呼ぶことがあり、このような地震が発生すると何らかの被害が生じることが多い。また、それより小さい地震でも発生場所によっては被害が生じることがある。
本報告書で扱っている地震については、原則として理科年表のMの値を用いた。理科年表に載っていない地震については、1884年以前の地震は「新編日本被害地震総覧」、1885年〜1925年の地震は宇津の論文、1926年以降の地震は気象庁資料を用いた。
関連する用語:震度
<<マグニチュードと震度の関係>>
マグニチュードと震度の関係は、電球の明るさ(ワット数)と机の上の明るさとの関係に似ている(付図1−6)。同じ電球からの光でも、机が部屋のどこにあるかによって机の上の明るさが異なるように、1つの地震でも、地震が発生した場所(震源域)からの距離や方向によって震度が異なる。例えば、1995年の兵庫県南部地震(M7.2)の場合、震源域近くのいわゆる「震災の帯」では震度7となったが、神戸海洋気象台や洲本測候所では震度6、京都、彦根、豊岡では震度5となり、震源域から離れるにしたがって震度は小さくなった。震源域から遠く離れた東京では、さらに震度は小さくなり、震度1であった。
また、電球や机の位置が変わらない場合でも、電球の明るさ(ワット数)によって机の上の明るさが異なるように、同じ場所で発生した地震でもその規模(マグニチュード)によって、震度が異なる。
一般に、マグニチュードが大きいほど、かつ、地震の発生場所(震源域)に近いほど、震度は大きくなる。しかし、マグニチュードが大きくても震源域から離れていれば震度は小さい。なお、震度は、地震が発生した深さ、断層のずれ方、地震波の伝わり方、地盤の状況などにも関係するので、震源域から離れるにしたがって一様に減衰するものではない。
本報告書では、器械を用いた近代的な地震観測が開始される以前に発生した地震のうち、歴史の資料(古文書等)に記述されている地震(歴史地震とも言う)のことを意味している。
歴史の資料の質や量は、時代や地域によって異なるので、全国的に均質に地震が知られているわけではない。例えば、古くから都のあった近畿地方では歴史の資料が豊富であり、数多くの地震が知られている。一方、歴史の資料が比較的少ない地方では、知られている地震の数が少ない場合があるが、必ずしもその地方で発生した地震が少ないことを意味するわけではない。また、記録漏れによって実際には存在した地震が知られていない場合や、誤った記録によって実際には存在しなかった地震が知られている場合がある。
一方、トレンチ調査や遺跡発掘調査などで発見された、断層や液状化跡などの地震の痕跡は、歴史の資料がない時代に発生した地震を知る手がかりとなる。これらの地震と歴史の資料によって知られている地震を含めて、古地震と言うこともある。
また、歴史の資料によって知られている地震の震源や震源域は、被害状況や津波の状況などを基にして推定されるので、誤差が比較的大きい。古い地震のマグニチュードは、被害が及んだ範囲などから推定されている。
日本で、全国的に器械を用いた近代的な地震観測が行われたのは、1885年以降であり、まだ約100年しか経っていない。地震の繰り返し間隔は、プレート間地震のような短いものでも100年以上、陸域の活断層で発生する地震については1,000年以上であるので、日本の地震活動の特徴を把握するためには、歴史の資料などによる地震の情報は非常に重要である。
なお、本報告書では、1885年を境に、記号を変えて被害地震を図示している。
(参考資料1) 付表2−2 気象庁震度階級関連解説表
(参考資料2) 付表2−3 気象庁震度階級(1949)と参考事項(1978)
(参考資料3) 付表2−4 気象庁告示第4号