中国地方には活断層が少ない。また、存在する活断層の活動度もB級以下であまり高くない。主な活断層は、広島市から岩国市付近に分布する五日市断層や岩国断層帯、下関北方に分布する菊川断層、兵庫県から岡山県にかけて延びている山崎断層帯などである。これらの活断層は、北東−南西ないし北西−南東方向に延び、東西に圧縮されるような向きに動く活動を繰り返してきた。実際、中国地方は日本列島の中でも地殻変動の比較的小さなところであるが、その中〜東部では、中部地方や近畿地方から続いて、ほぼ東西方向に地面が縮む傾向が見られ、中部地方や近畿地方ほどではないが、圧縮の力がかかっているとみられる(図8−5)。なお、広島県西部には、北東−南西方向の線状の谷など(リニアメント)が多数みられるが、これらは古い時代の断層に沿った侵食により現れたものと解釈されており、活断層である可能性は低い{11}。
明治以降に発生した中国地方の陸域の浅い大地震としては、1943年の鳥取地震(M7.2)がある。また、1872年の浜田地震(M7.1)は震源域が海域にかかっているが、地震発生の仕組みは陸域の浅い地震と同じと考えられている。ここ数十年間に、北陸地方から近畿地方を経て中国地方に至る日本海沿いでは、鳥取地震のほか1948年の福井地震(M7.1)や1927年の北丹後地震(M7.3)などの陸域の浅い大地震が発生した。これらの大地震は、陸域の浅いところで発生したため、局所的に著しく大きな被害が生じた。特に、鳥取地震や福井地震の震源域は、軟弱な地層が厚く堆積した市街地のごく近くであり、そのことが被害を拡大させた。山崎断層帯では、そこで発生したと考えられる868年の播磨・山城の地震(M7以上){12}や最近のM6程度の地震(1984年、M5.6など)が知られている。また、日本海南西部では、1940年のM6.6の地震のように、逆断層型の浅い地震が発生することもあり、朝鮮半島では津波被害が生じていることから、日本海沿岸で津波被害が生じる可能性がある。
四国地方では、中央構造線に沿う極めて明瞭な一連の右ずれの活断層(中央構造線断層帯)が特徴的であり、その南側には活断層はほとんどない。四国地方の中央構造線断層帯は活動度A級の右横ずれを主とする活断層である。上下方向のずれは讃岐山脈南麓では北上がりのずれを示すが、石鎚山脈北部では南上がり、高縄半島では北上がり、松山以西では南上がりとなり、山地の分布と調和的である。室戸半島や足摺岬付近には、活動度の低い活断層が認められ、これらは南海トラフで発生する巨大地震と関係が深いと推定されている。なお、四国地方では歴史の資料を含めて陸域の浅い地震による被害はあまり知られていない。
なお、活断層の活動間隔の多くは1,000年以上なので、そこで発生した地震が知られていなくても、地震が発生しないということを示しているわけではない。