このように、このタイプの地震は震源が浅いため、M7.0程度以上の大地震が発生した場合、断層運動が地表面まで達して、地表にずれが生じることが多い{14}。地形や地質の調査から、地表をずらした断層では、少なくとも過去数十万年にわたって、そのようなずれが累積してきたことが分かっている。これは、ほぼ同一の既存の弱面(断層面)で、ずれを繰り返してきたこと、すなわち、そこで何度も大地震が発生してきたことを意味している。また、このことは、日本列島の地下には、少なくとも最近数十万年の間、同じような力がかかってきたことを示している。したがって、地下に同様の力がかかっている限り、このような断層では、今後も大地震が繰り返し発生すると考えられる。過去に活動を繰り返し、今後もその可能性がある断層を活断層と呼ぶ。
活断層は、過去の地震に伴うずれの累積により、もともと一続きだった地形が不連続になるなどの独特な地形を形成する(図2−21、図2−22)。したがって、このような地形を手がかりにして、活断層を見出したり、活動度を推定したりすることができる。活断層を見出す調査では、図2−21のような地形を探し出すために空中写真などが用いられることが多い。図2−23に示した日本列島とその周辺における主な活断層の分布を見ると、山地と低地の境目に活断層が分布するなど、地形と活断層の分布には密接な関係のあることが分かる。
活断層を詳しく調査すると、それぞれの活断層によって、ずれの累積する割合が大きく異なっていることが分かる。すなわち、活断層の活動の程度は、活断層によって大きく異なる。このような活動の程度を活動度と呼び、1000年あたりの平均的なずれの量(平均変位速度とも呼ばれる)に基いて、それが大きい順に、A、B、C級の3つのクラスに区分されている{15}。活動度が最も高いA級の場合、1000年あたりの平均的なずれの量は、1〜10mとされる。活動度は、個々の活断層での地震の発生間隔あるいは地域的な地震活動の特徴を考える上で、重要な指標となる。例えば、活動度A級の活断層が多数分布している地域では、そうでない地域に比べて、規模の大きな地震が発生する頻度は高いといえる。
さらに、活断層を掘り起こして、その活動の履歴を調査すること(トレンチ調査)も行われている(図2−24)。そのような調査によって、活動の間隔や最新の活動時期、活動した断層の範囲(断層長)、あるいは歴史の資料によって知られている地震との対応など、活動の履歴が明らかになれば、次の活動時期や規模をある程度評価することができる。ただし、活断層の活動の間隔は、短くとも1,000年程度と長く、しかもある程度のばらつきがあるため、次の活動時期の評価は数百年程度の精度にならざるをえない。また、局所的に大きな被害をもたらすこともあるM6程度の地震では、一般に地表にずれが生じないため、この程度の規模の地震を通常の活断層調査で捉えることは困難である{16}。
日本列島では、活断層の活動の繰り返しなどによって平野や盆地が形成され、そこに市街地が発達することが多い。したがって、市街地の直下やごく近くで大地震が発生することもある。また、平野や盆地などでは、場所により河川等で運ばれてきた堆積物が非常に速く積もることがあり、このようなところでは、地形だけを見ても活断層の存在が分からないこともある。
また、海岸に近い海底の活断層で地震が発生した場合は、強い地震動とともに津波が直後に来ることになる。
なお、陸域では、より深いところ(50〜200km程度)でも地震が発生しているが、これは沈み込んだ太平洋プレートやフィリピン海プレートの内部で発生する地震である(2−4(1)3)参照)。