海溝型の地震として近年発生した1978年宮城沖地震(M7.4)は、その震源域が陸域に近かったため、地震動による大きな被害が発生した。この地震が発生した海域では、1855年 、1897年、1936年にも同じような規模の地震が発生しており、その発生間隔はおおむね40年程度である。1936年の地震は、その震源、規模ともに1978年のそれとほぼ同じであり、仙台市などでは震度5が観測された。(地震調査研究推進本部地震調査委員会,1999)。
陸域で明治以降に発生した被害地震としては、1956年の白石の地震(M6.0)、及び1900年(M7.0)と1962年(M6.5:宮城県北部地震)に宮城県北部で発生した地震がある(地震調査研究推進本部地震調査委員会,1999)。最近発生した内陸型の地震として、1998年9月15日仙台市青葉区愛子付近で発生した地震(M5.0)がある。このとき仙台市では震度4を観測した。海野ほか(1999)は、この地震は余震分布・メカニズム解から長町−利府線の最深部の地下深度12.5kmで発生した地震であり、西北西−東南東方向のP軸(主圧力軸)を持つ逆断層型であるとしている。なお、吉本ほか(1997,2000)は、微小地震活動が長町−利府断層の北西側において顕著で、震源深さは3〜13kmであり、これらの震源は地表における長町−利府断層を起点に30〜40゜の傾斜角で内陸方向に深くなっているとしている。また、前述のように、地震予知総合研究振興会(2002)は、反射法地震探査の結果から、この地震の震源位置が長町−利府断層の深部延長に相当する可能性が高いことを指摘している。
東北大学大学院工学研究科災害制御研究センター(地震研究分野)では、上記の1998年の地震に対して、強震動観測記録による地震動の方向性や震動特性を示すとともに、1978年の宮城県沖地震との比較を行っている。この結果、1998年の地震は、方向性のある地震動で、断層に平行な方向の成分よりも断層直交方向成分の方が卓越していること、宮城県沖地震と比較して地震動の継続時間ははるかに短く(2sec程度)、長周期成分も少ないが、0.5sec以下の短周期側では宮城県沖地震よりも強い揺れを示したことなどを示している(東北大学大学院工学研究科災害制御研究センターweb公開資料)。
この様に、強震動観測記録は発生した地震動の解析を行うのに有益であると同時に、地下構造モデルの精度を検証するためにも必要である。このため、強震動観測記録を入手することを目的として、宮城県内の強震動解析網の現状を調べ、表2−6−1に示した。
宮城県内では、1996年6月から防災科学技術研究所の強震動解析網K−net(17箇所)による観測が開始され、2000年にはHi−net(12箇所)及び広域地震観測点(2箇所)による観測が開始された(表2−6−1参照)。これらの観測網で記録されたデータはweb上で公開されている。
また、1983年から11点の観測局による仙台高密度強震観測(仙台アレー)も実施されており、5点(長町小学校、沖野小学校、四郎丸小学校、鶴谷小学校及び泉電力ビル)は東北大学が、その他の6点(宮城野小学校、中野小学校、折立小学校、玉川中学校、鶴巻小学校及び榴岡小学校)は独立行政法人建築研究所が管理し、観測・解析等を行っている。各観測地点には地表及び地中に3台の加速度計を設置している。この観測では、宮城県や福島県の太平洋側で発生した地震を中心に、多くの貴重な記録を収集しており、その分析結果は設計用入力地震動の研究等に役立てられている。