2−3 ボーリング・物理検層データ

調査地域において、地震基盤に相当すると考えられる先第三系に達している深層ボーリングは、防災科学技術研究所の基盤強震観測網(Kik−net)の観測井「仙台MYGH01」(掘削長1,236m:以下、「仙台Br」と記す)、ウエルサンピア仙台(厚生年金健康福祉センターサンピア仙台)のボーリング(掘削長732m:以下、「サンピア仙台Br」と記す)、及び新愛宕橋右岸のボーリング(掘削長1,200m:以下、「愛宕橋Br」と記す)である。これら3本のボーリングのうち愛宕橋Brは、長町−利府断層の上盤側で掘削されているが、サンピア仙台Brと仙台Brは断層下盤側の平野内で掘削されている。

仙台Brでは、地質観察とPS検層が実施されており、速度構造が判明している。これに対し、サンピア仙台Brでは、詳細な地質観察と電気検層が、愛宕橋Brでは地質観察が実施されている。表2−3−1表2−3−2表2−3−3に各ボーリングの地質状況を示す。また図2−3−1に、これらの概略の柱状図を示す。仙台Brの柱状図には、PS検層より解析されたP波とS波の区間速度も併記している。なお、仙台Brの柱状図は、防災科学技術研究所のホームページに公開されているデータを基に、サンピア仙台Brのそれは、ボーリング掘削時の柱状図を基に、また、愛宕橋Brのそれは、盛合・上野(1997)と仙台市科学館に展示してある当該コアの地質記載を基にそれぞれ作製した。

仙台Brでは、深度0〜65mは細砂〜粗砂からなる第四系、深度65〜250mは凝灰岩とシルト・凝灰岩の互層を主体とする新第三系、深度250m以深は砂岩を挟む頁岩からなる中生代三畳系とされている。この三畳系はその層相から利府層と考えられる。仙台BrのPS検層より求められた速度構造では、深度0〜50mはP波速度1,750m/s(S波速度210m/s)、深度50〜110mではP波速度はその上位層と同じ1,750m/sであるがS波速度は560m/sec、深度110〜250mはP波速度3,520m/sec(S波速度1,750m/sec)である。深度50〜110mはその速度からは第四系〜新第三系よりなる可能性もある。また、深度110〜250mの地層は、その層相及び後述する速度値から、下部中新統の可能性がある。深度250m以深の三畳系ではP波速度4,830m/sec(S波速度2,450m/sec)であるが、深度700m付近を境に、それより深部はP波5,630m/sec(S波速度3,260m/sec)となっている。しかし、柱状図からはこの付近で明確な速度の差が生じることは考え難いが、壁開等の影響によるものか、あるいはボーリング孔底まで徐々に速度が増加したため、速度構造図表記上から作成した境界である可能性もある。

サンピア仙台Brは、その柱状図から、深度0〜52mは砂礫を主体とする第四系、深度52〜266mは砂岩を主とする上部〜中部中新統を含むこれより上位の新第三系、深度266〜338mは火山礫凝灰岩〜凝灰岩を主体とする下部中新統、深度338m以深はひん岩を挟み粘板岩を主体とする先第三系と考えられる。先第三系は、その層相から三畳紀の利府層と考えられる。

愛宕橋Brは、盛合・上野(1997)によると、おおむね深度0〜200mは新第三紀鮮新世の仙台層群、深度200〜800mは新第三紀中新世の名取層群、深度800m以深は先デボン紀の変成岩で、この変成岩は割山層の可能性があるとされているなお、仙台市科学館に展示してある当該コアの地質状況は表2−3−3の通りであり、盛合・上野(1997)が名取層群とした部分のうち、少なくとも640m以深は安山岩質凝灰角礫岩からなる高館層の地層である可能性が高い。

以上のことから、これらのボーリングは、おおむね下位より次のように対比できる可能性がある。

先第三系の上面は、おおむね仙台Brで深度250m、サンピアBrで深度360m、愛宕橋Brで深度780mと考えられる。

下部中新統の上面は、おおむね仙台Brで深度110m、サンピアBrで270m、愛宕橋Brで深度640mと考えられる。これらはいずれも凝灰岩〜凝灰角礫岩を主体としている。

第四系の下面は、おおむね仙台Brで深度65m、サンピアBrで深度50mと考えられる。

調査地域におけるこれら以外のボーリングについて、深さ30m以上のものを収集した。それらの位置を図2−3−2に、またそのリストを表2−3−4−1及び表2−3−4−2に示す。掘削深さが200m以上のものは全部で30本あり、今後の3次元地下構造モデリングの際に活用できるものと考えられる。なお、今年度の反射法・屈折法地震探査測線のほぼ直上(CDP250付近)では、表2−3−1−2のNo.49のボーリングがあり、その地質は深度58mまでは表土、礫混じり粘土、砂礫等の第四系が、また深度58〜72mには新第三系の可能性がある砂岩が分布している。これと探査結果との関係については後述する。