地表での重力異常値は、簡単に言えば上部マントル及び地殻構造の総合的、地域的違いを反映したものである。より具体的には、マントルの中のプレートやアセノスフェアの構造、地殻の厚さ、地表近くの地質構造による重力値がすべて足し合わさったものがブーゲー異常として観測される。ブーゲー異常図において急激にブーゲー異常が変化していれば、そこには断層構造を推定できるし、高いブーゲー異常は基盤などの高密度の物質が地表近くに位置していることを、低い異常は堆積物の厚さについての情報を与えているかもしれない。また、ブーゲー異常の起伏からその原因を考える場合は、「波長」の概念を持つことが有用で、一般に長波長の変化は地下深部に原因があり、短波長の変化は浅いところに原因があるとされている。しかし、長波長の変化については、長波長を持った浅い構造変化でも説明可能であるため注意が必要である。
地質調査所(1991)の縮尺1:200,000の重力図(仮定密度ρ=2.3g/cm3:図2−2−1)によると、調査地域の北東及び南西にはブーゲー異常が高重力域(H)を示すところがあるが、前者は中生代三畳紀の利府層の高まりにより、後者は新第三紀中新世の高館層の高まりにより、基盤が浅くなっていることに起因するものと考えられる。長町−利府線に沿っては、ブーゲー異常は相対的に急傾斜を示す。また、全体にブーゲー異常は西に向かって負異常となる傾向にあるが、これは、前述のように、長町−利府断層が中新世には西落ちの正断層として活動したと推定されることから、基盤の深度が西側で深くなっていることによるものと考えられる。なお、財団法人地震予知総合研究振興会(2002)のLine Bの西方に低重力域(L)が見られるが、これは、この地域より西側に中新世の火山活動に伴ってカルデラが形成されたことにより、ここでは堆積物が厚く堆積し、基盤深度が深くなっていることに起因するものと考えられる。図2−2−1に示した「サンピア仙台」の深層ボーリング位置の南方約1km付近と「H7長町−利府断層帯 測線3」の南方約2km付近には等重力線に乱れが見られる。図2−2−2は、今年度の地震探査測線にほぼ沿ったA−A'断面(図2−2−1参照)のブーゲー異常を示したものである。この断面の地形、特に今年度の地震探査測線上の地形はほぼ平坦であることから、測線中央部のブーゲー異常は地下構造に起因するものと考えられる。測線中央部に基盤の窪みがある可能性が高い。