甲府盆地はこれまで、体系だった深部の地下構造調査は行われていなかったが、今回の調査で、甲府盆地内の堆積構造の全容が大まかに明らかになったといえる。
明らかになった内容は次の通りである。
@ 基盤層(工学的基盤・地震基盤)の形状とそこまでの深さ
→地震基盤は概ね南西傾斜で深いところでは深度2500m程度
A 地表から基盤までの地質構成
→場所により異なるが上部礫層・韮崎岩屑流・中部礫層・黒富士火砕流・水ヶ森火山
岩・花崗岩類が分布
B 構成物質の物理特性(P波速度、S波速度、密度)
→上部礫層 :P波速度1.6km/s、S波速度0.6km/s、密度1.2〜2.16g/cm3
韮崎岩屑流 :P波速度2.2km/s、S波速度1.1km/s、密度1.38〜2.52g/cm3
中部礫層 :P波速度2.1km/s、S波速度0.9km/s、密度1.59〜2.42g/cm3
黒富士火砕流:P波速度2.1〜3.2km/s、S波速度0.9〜1.1km/s、密度1.34〜2.37g/cm3
水ヶ森火山岩:P波速度3.2〜3.8km/s、S波速度1.2〜1.3km/s、密度1.74〜2.61g/cm3
C 主要な推定断層の存在
→盆地西部に市之瀬断層群、盆地南部に曽根丘陵断層帯がある。しかし、それらの
活動性、規模など細かな解明はできなかった。
D 速度層モデルを考える場合は4層モデルで説明可能
→ [S波速度]
第1層(上部礫層) 0.42km/s
第2層(堆積層及び第三系上部) 1.04km/s
第3層(第三系下部) 1.78km/s
第4層(地震基盤) 2.94km/s
今後はこれらの成果を踏まえて山梨県全体の地震被害予測が行われ、更に、その成果を基に地震防災対策計画が立案される予定である。