5−4−5 解析結果

解析手順のフローチャートを、図5−4−5−1に示す。

図5−4−4−2−1図5−4−4−2−2に示す観測地震波から求めたtransverse成分速度波形を、図5−4−5−2−1図5−4−5−2−2に示す。各図とも,図中の観測点記号の下に記した数値(波形表示範囲における最大振幅値)を用いて、振幅値を規格化してある。なお、図5−4−5−2−1において、地震A(神奈川県西部地震)のSGN地点の波形のみ、波形位相を反転して表示した。これは、SGN地点におけるSH波の立ち上がりかたが、他の6地点とは逆であったためである。

SGN地点の観測波形は12.5ms(80Hz)サンプリング間隔で、他の6地点の観測波形はすべて10ms(100Hz)サンプリング間隔で収録されている。しかし、速度構造モデルの検証作業を行うには、数Hz程度以下の波形成分を利用すれば充分である。そこで、以下に述べる計算処理作業では,サンプリング間隔を50ms(20Hz)に変換した波形データを用いた。

理論地震波を計算する際、入力波(SGN地点のtransverse成分波)のSH波主要動以外の波形には、余弦型テイパーを有するバンドパスウィンドウ(テイパーの割合はウィンドウ幅の約10%)を時間領域で適用して、不要な震動波形の振幅を抑制した。ウィンドウ幅は、地震Aに対して5秒、地震Bに対して12秒とした。また、自由表面におけるSH波の振幅増幅効果を補正するため、入力波の振幅を50%とした。その際、地震Aの入力波については、既述した理由によって位相を反転させた。

波形比較の際、観測地震波を含むすべての波形データに対して、波の位相を保存する特性のバンドパスフィルターを適用した。フィルターの通過周波数範囲は,地震Aに対して0.1〜2.0Hz、地震Bに対して0.1〜1.0Hzとした。また、地震波の観測値と理論値とが比較しやすいように、観測地震波に対しても時間領域で、入力波と同じ種類のバンドパスウィンドウを適用した。振幅スペクトルを計算する際、各観測点のSH波主要動を含む8秒間(地震A)または25秒間(地震B)の波形を切り出して利用した。観測地震波形に対する振幅スペクトル比は、SGN地点の振幅スペクトルを基準として計算した。

観測地震波形と理論地震波形との比較を図5−4−5−3−1図5−4−5−3−2に、振幅スペクトル比の比較を図5−4−5−4−1図5−4−5−4−2に、地震波形(観測値及び理論値)の振幅スペクトルを図5−4−5−5−1図5−4−5−5−2に、それぞれ示す。

なお、図5−4−5−3−1図5−4−5−3−2においては、SH波の到達時刻が概ね10秒前後となるように、すべての波形の時間軸を調整した。また、地震Bでは1.0Hz以上の高周波数の震動成分をフィルターで除去して計算処理を行ったため、図5−4−5−4−2,及び図5−4−5−4−2では1.0Hz以上の高周波数成分データの表示を省略した。