5−3−1 S波速度の取り扱い

最初に、モデル作成作業を単純化するため、各層のS波速度は場所を問わず、共通の値とする。具体的には、微動アレー探査の逆解析で推定したS波速度を各層毎に平均する。次に、P波速度や密度については、微動アレー探査の逆解析方法に準拠して、以下に示す松岡・白石・梅沢(2000)の回帰式により、各層の平均S波速度から統計的に換算する。

Β=0.64α−0.51  (相関係数=0.97,サンプル数=27);

ρ=0.22α+1.51  (相関係数=0.92,サンプル数=22);

ただし α:P波速度[km/s],β:S波速度[km/s],ρ:密度[g/cm3]

微動アレー探査結果に基づく各層の平均S波速度及び平均値の標準偏差は、次のとおりである。

                       [S波速度]

第1層              0.42km/s±0.04 km/s(9.1%)

第2層              0.73km/s±0.06 km/s(7.6%)

第3層              1.03km/s±0.03 km/s(3.2%)

第4層              1.37km/s±0.09 km/s(6.9%)

(第2層〜第4層の平均S波速度  1.04km/s±0.27 km/s(26%))

第5層              1.78km/s±0.07 km/s(4.2%)

第6層              2.94km/s±0.15 km/s(5.2%)

平成14年度調査結果では、微動アレー探査による速度構造モデルとして、7層成層モデル(6層半無限モデル)を提示した。その際、地震基盤相当層は第6層及び第7層(半無限層)の二層であった。しかし、最下部の第7層は本来、第6層以浅のモデルパラメータ(層厚及びS波速度)を安定に推定する目的で、便宜的に導入した付加層である。そのため,以後のモデル作成では、付加層(第7層)以深の構造については考慮しないこととする。