図3−2−2−3−1の走時曲線では、堆積層中を通る初動の見かけ速度として、VP1002,VP
1003付近では2500m/s前後の走時が観測されている。一方VP1001,VP1004付近では3500m/s程度の走時となっており、明らかに測線の両端では堆積層の伝播速度が速いか、あるいは基盤の出現深度が浅くなっていると考えられ、横方向に不均質な地質構造であることが推測される。
南北測線おける走時曲線を図3−2−2−3−2に示す。横軸に各発震点からの距離、縦軸に初動読み取り値をプロットしたものである。東西測線と同様に、ここでプロットした初動読み取り値は、発震記録から読み取った値そのものではなく、両端の発震点であるVP1001とVP1003を直線で結ぶ仮想測線に投影し、VP1002を距離の原点として、距離・走時を補正した値である。図3−2−2−3−2の走時曲線では、各層の屈折波の見かけ速度も示してある。堆積層中を通る初動の見かけ速度として、VP1001,VP1002付近では2200〜2500m/s前後の走時が観測されている。一方VP1003付近では3200m/s程度の走時となっており、明らかに測線の南端では堆積層が速いと考えられ、南北方向あるいは東西方向に不均質な地質構造であることが推測される。
速度構造モデルの推定では、東西測線、南北測線とも 表層補正解析で求めた表層構造を参考にして、表層速度および表層基底層の深度を仮定し、表層より下の構造については屈折走時の見かけ速度およびインターセプト時間を読み取り、発震点直下の屈折面の速度および深度を計算した。同時に反射法による深度断面図および速度解析の結果等を参考にしながら、基盤の形状や速度構造を推定し、大局的な速度構造を求める。その後、岩崎(1988)による波線追跡プログラムを用いてレイトレーシングを行い、試行錯誤的に速度構造モデルを微調整しながら理論走時と実際の初動走時を合わせ、最終的な速度構造モデルを求めた。
図3−2−2−4−1には東西測線の屈折波の理論走時と観測走時との比較、速度構造モデルの波線図を示し、図3−2−2−5−1には最終的な速度構造モデルを示す。
また、図3−2−2−4−2には南北測線の屈折波の理論走時と観測走時との比較、速度構造モデルの波線図を示し、図3−2−2−5−2には最終的な速度構造モデルを示す。
東西測線の地震基盤相当層(P波:5000〜5500m/s)は測線の東側で深度1500m前後でほぼ水平であるが、測線中央部付近より徐々に深くなり、測線の西端では2400m程度となる。また基盤の速度は測線中央部で5000m/s程度であり、西側に深くなるに従い、速度も5500m/s程度まで増加している。
南北測線の地震基盤相当層(P波:4400〜4800m/s)の深度は測線の北側で地表から深度500〜600mであり、南にいくに従い徐々に深くなっていき、測線中央部で地表から深度1500m程度、東西測線との交点付近の笛吹川では深度1600〜1700m前後となる。
それら東西測線、南北測線の結果をもとに速度区分をまとめると、層厚変化があるものの山地、丘陵地を除く盆地内の速度層としては次のように4層に区分される。
@ 第1速度層:1400〜2000m/s
A 第2速度層:2200〜2800m/s
B 第3速度層:3000〜3600m/s
C 第4速度層:4400〜5500m/s