5−4−5 微動アレー探査結果から独自に推定した地震基盤構造

図5−3−5−6図5−3−5−7によれば、推定地震基盤(S波速度2.7km/sec以上の層)は甲府盆地北東部→同・南西部の方向に向かって、ゆるやかに深くなっている。このことは、既存の調査結果(重力異常解析ほか)と調和的である。

一方、釜無川右岸側のアレー列(K10−K3−K9−K8)を南側から北側へたどると、推定地震基盤はアレー地点K9付近(櫛形町)まで1,790m深以上の深度に分布し、その後急激に浅くなって(白根町〜八田村間)1,230m深にまで達する。この傾向は、既存の重力異常解析に基づく解釈からは得られなかった、新しい知見である。

また、アレー地点K8(八田村)の小アレー近傍で実施されたボーリング調査によれば、八田村中心部付近の基盤深度は地表深度にして約850mであり、本年度調査の微動アレー探査結果(1,230m)と一致しない。前節5.4.3で述べた地殻構造の水平方向の地域性が、八田村直下に存在する可能性は大きい。しかし、現時点では参照可能な既存資料が少ないため、本調査結果だけから詳細を論じることは控える。

他方、甲府盆地北部のほぼ東西方向に並ぶ2ヶ所のアレー地点、K6(竜王町)とK8(八田村)とでは、図5−3−4−8に示すように、K6での低周波側(長周期側)の位相速度がK8よりも遅い。しかし、両者の推定地震基盤の上面深度は、K6において1,222m深、K8において1,230m深とほぼ同じ値である。これは、前節5.4.2での記述や図5−3−5−6に示すとおり、比較的S波速度の早い地層の分布が、八田村側(K8)では厚く、竜王町側(K6)では薄くなっているためと解釈できる。