2−1−1 地形・地質および地質構造

甲府盆地は、古い地殻活動によって陥没が生じたのち最初に火山性屑砕物の堆積を続け、その後さらに釜無川および笛吹川などの河川によって土砂が運搬され、現在を形成しているとされている。地質的には西方及び南東方をそれぞれ中新世の火山岩類からなる巨摩山地及び御坂山地に、北方を先新第三系の堆積岩やそれらを貫く中新世の花崗岩類からなる関東山地に囲まれた内陸盆地である(図2−1−1図2−1−1−1図2−1−2参照)。

盆地の範囲は明確ではないが、東西約20km、南北約15kmの北側が広い三角形をしており、大部分が海抜高度250〜350mの範囲に含まれる。

盆地周辺の地質構造は、北部地域、東部から南部地域、及び西部に分けられる。

北部地域は、主として黒富士・水ヶ森・茅ヶ岳など後期中新世−鮮新世−デイサイトが分布する(三村ほか、1967・1984)。また、盆地を取り巻くように昇仙峡深成岩帯(花崗岩類)など4岩体が分布する(加藤、1968:角田ほか、1982:三村ほか1984)。

東部から南部地域は白亜系〜古第三系の小仏層群(砂岩・泥岩・チャート・玄武岩・石灰岩礫など)(高橋ほか、1989:高橋・石井、1993a)及び中新世の花崗岩体が北部地域から連続している。南部の曽根丘陵は八ヶ岳火山岩屑及び河成堆積層(曽根層群)からなり、

NE−SW方向の曽根丘陵活断層群が発達している(下川、1995:杉山、1997)。笛吹川沿いには上流から中・低位段丘が広がっている。

西部地域は釜無川流域には古八ヶ岳火山岩屑なだれ堆積物と段丘が分布し、下流では扇状地堆積物が広がっている。また、基盤岩との境界付近にはN−S性の活断層が数条発達している。

甲府盆地内の地下地質の層序構造については、1960年以降のボーリング資料が多く集積されるようになった。これらの資料を基に、盆地内に伏在する中部更新統〜完新統の堆積構造を、海野(1988)が検討した。更に検討を進め、海野(1991)によつて盆地内の堆積構造が図2−2−2−1図2−2−2−2のようにパネルダイヤグラムで示され、堆積層序を詳しく示している。盆地内は、既述したように中部更新統〜完新統の砂礫層に厚く覆われており、基盤の花崗岩に到達している試錐は少ない。地下構造は爆破地震動観測(図2−1−4)、重力探査のデータ(図2−3−2図2−3−3図2−3−4図2−3−5図2−3−6図2−3−7、)および平成13年度、平成14年度実施した構造調査(本調査)からは基盤が南西方向に傾斜していることが推定され、盆地の南西部で最も深い(堆積層が厚い)と考えられている(図2−1−4参照、深度2,000m程度)。

盆地の西部及び南部は断層により境されており、それぞれ巨摩山地及び御坂山地が衝上しているとされている。

甲府盆地周辺では、温泉を主目的とした試錐調査が多数行われているが、それらの掘削深度やコア鑑定の結果は公表されていないものが多く、また柱状図が存在しても地震動解析に必要な物性関連のデータ取得はされていないため、その詳細は解らない部分も多い。

既往資料による試錐結果については、盆地南西部に位置する若草町で実施された温泉試錐(若草1:掘削深度1297m)がある。それによると1002m以深は凝灰角礫岩(グリーンタフ)であるとされている。その他、甲府盆地東部の石和(石和1:掘削深度800m)で掘削された試錐では、深度795mで花崗岩が分布するとされている。

なお、1999年(平成11年)に糸魚川―静岡構造線の南部セグメントに区分される白州断層と市之瀬断層帯を横断する測線で浅層反射法地震探査が行われている。その結果によると、白州断層付近では基盤とされる花崗岩類が山側(断層西側)では表層から、盆地側(断層東側)では標高450〜500m付近(地表からの深度200〜280m付近)より認められ、市之瀬断層帯付近では、山側(西側)で標高0〜200m付近(地表からの深度350〜400m)、盆地側(断層東側)では標高−350〜−500m(地表からの深度750〜800m)付近に認められるとしているが、試錐による確認がなされていないため花崗岩の出現深度は不明である。

しかし、既存データや平成13年度からの深部を対象とした構造調査によると、前述したように概ね、甲府盆地北部では地震基盤とされる花崗岩類や基盤とされる火山岩類は浅く、南部では深くなる北東―南西傾斜の傾向にあることが判明した。また、それらの上位には完新統・更新統の段丘堆積物、韮崎泥流堆積物が分布するものと考えられる。

図2−1−1 甲府盆地及びその周辺の地質図(S=200,000)

(産業技術総合研究所 地質調査総合センター:20万分の1地質図幅「甲府」,2002より引用)

表2−1−1 甲府盆地周辺の地質層序表

図2−1−2  甲府盆地周辺の断層系ストリップマップ

(地質調査所:糸魚川―静岡構造線活断層系ストリップマップより引用,1995)

図2−1−3  甲府盆地周辺の速度構造調査測線図

(國友、古本:爆破地震動観測による甲府盆地の地下構造,地震第48巻より引用,1995)

図2−1−4    甲府盆地の地下(速度基盤)構造

(國友、古本:爆破地震動観測による甲府盆地の地下構造,地震第48巻より引用,1995)