5−4−4 S波速度構造解析

S波速度構造の推定には、個体群探索分岐型遺伝的アルゴリズム(fGA)を用いた。解析パラメータとしては解析モデルの層数及び各層における層厚とS波速度の探索範囲とがあるが、層数及びS波速度は既存資料(「平成9年度修士論文、甲府盆地における地震被害分布の成因」)を参考にした。また、層数については、今年度実施された反射法地震探査結果も参考にした。逆解析は4層構造の初期モデルを設定し、初期モデルから得られる分散曲線(理論分散曲線)と各観測点で得られた分散曲線(観測分散曲線)とのフィティング具合を比較し、最も理論分散曲線が観測分散曲線に近似した時のモデルを最終解とした。図5−20図5−21図5−22に解析結果、表5−9に各観測点の逆解析最終解を示す。

図5−20 解析結果(K1)

図5−21 解析結果(K2)

図5−22 解析結果(K3)

表5−9 逆解析最終解

図5−20図5−21図5−22の左側は、観測分散曲線(○印)とS波速度構造から計算される理論分散曲線(実線)を重ねて示してある。図右側には、推定されたS波速度構造を示している。

第1層はほぼ水平構造で、平均S波速度は0.67km/sである。

第2層は、観測点K3のS波速度値が1.38km/sを示しており、観測点K1と観測点K2のS波速度値と比較すると約0.4km/s高速である。図5−17の分散曲線の傾向から、中深度部では観測点K3が浅くなることが考えられるので、観測点K3のS波速度値から、観測点K3の第2層は、観測点K1及び観測点K2の第2層と同じ速度層ではなく、さらに下位の層に相当すると考えられる。観測点K1と観測点K2の第3層のS波速度値は、それぞれ1.21km/sと1.36km/sであり、速度値から観測点K3の第2層と同じ速度層と考えられる。

観測点K3の第3層は、S波速度値1.77km/sである。観測点K1と観測点K2の第4層の速度値は3km/sを越えており、観測点K3の第3層とは異なる速度層であるといえる。

第4層は観測点K1から観測点K3にかけて深くなる構造で、平均S波速度は3.34km/sである。深度は一番浅い観測点K1で1,000mを越えており、S波速度値は全観測点で3km/s以上示していることから、第4層の上面を地震基盤面と考えた。図5−22にS波速度構造断面図を示す。

図5−23は、速度層を年代順に色分け表示している。A層からE層にかけて年代が古くなる。観測点K1及び観測点K2にはD層がなく、観測点K3にはB層がない結果となった。

今年度の測定結果は、次年度に実施予定の微動アレー調査及び反射法地震探査結果等によって新たにデータが追加されるのに伴って再検討が必要となる場合も有ると考える。