(2)位相速度の推定

SPAC法による位相速度推定には微動信号を定常確率過程と仮定するほかに観測データにはレイリー波基本モードが卓越していることを仮定する。この仮定により、空間自己相関係数は次式のような第1種0次のベッセル関数で表現することができる。

Ρ(f,R) = J(2πfR/c)

ここで、ρ(f,R)は空間自己相関係数、fは周波数、Rは半径、c=c(f)は位相速度である。実際の解析では、半径Rは相関距離で置き換えられる。

SPAC法では、空間自己相関係数を、上式のベッセル関数に当てはめて、対応する位相速度を求める。上式で明らかなように、@半径 Rを固定しρを周波数fの関数として考えれば位相速度は周波数に対応して求められる。一方、A周波数fを固定し、ρを半径 Rの関数として考えれば、その周波数fに対する位相速度が求められる。本調査のように多重正三角形アレーを採用している場合、位相速度は@、Aどちらの方法からでも求められる。Aの方法による場合、位相速度はc=c(f)から、周波数fの関数であって半径Rの関数ではないので、周波数fを固定すれば定数のようにあつかえる。それにより、多様なアレーによる解の一種の平均操作といえる最小二乗法の適用が容易となるために、以後、本解析では、説明の便宜上、このような平均操作を統合操作と呼ぶことにする。