0 はじめに

1995年兵庫県南部地震における阪神・淡路大震災は、内陸型地震が都市を襲った場合の恐怖を我々にまざまざと見せつけ、全国どの地域においても「活断層の存在」は地域防災計画策定の基礎となることが広く認知された。また、この地震では「震災の帯」と呼ばれる特異な被害集中ゾーンが認められた。調査・研究の結果、これは、地下深部の地震波速度構造に大きく関係していることが明らかにされた。こうした特性は、それぞれの地域で基盤ならびにその上部にある堆積層の三次元構造の特性を知れば、事前に評価できるものであることを教えてくれた。

信頼性の高い強震動を予測するためには、その地域での活断層の存在ならびに地震基から地表までの地下構造を明らかにすることによりはじめて可能となり、信頼性の高いきめ細かな地震防災計画・対策を構築することができる。

人口20万を擁し、近年は特に近代化・都市化が著しい甲府市を擁する甲府盆地の場合これまで関連機関などにより調査・研究されたいくつかの知見をもとにその地域特性を簡単に整理すると、@〜Cに示すとおりであり、「震災の帯」を発生させた神戸地域と類似した地下構造を有しているとされる。

@ 盆地中央部では深度1,000m〜深度2,000mにも及ぶ、厚い堆積層を有する盆状構造である。

A 我国の大構造線である糸魚川―静岡構造線が甲府盆地の西側山地(台地)との境界部に推定されている。

B甲府盆地の西側は市之瀬断層群(糸魚川―静岡構造線の南部セグメント)、南側は曽根丘陵断層群が想定されている。しかしながら曽根丘陵断層群の解明はあまりなされていない。

C甲府盆地付近も含めた山梨県では、プレート境界型の地震と陸域の比較的浅部の地震が想定されている。

このように甲府盆地の大局的な地下構造や断層帯の分布は分かっているものの、地震防災の基礎となる強震動の面的分布などを予測できる詳細な地下構造はまだ解明されていない状況にあり、より信頼性の高い地震防災計画・対策を構築するためには、甲府盆地の地下構造の詳細を平成13年度から平成15年度の3年間に亘り解明することが必要となったものである。

なお、本業務は文部科学省の平成13年度地震関係基礎調査交付金を受け実施された。また、調査計画の立案、調査結果の検討等に関しては、学識経験者により構成される甲府盆地地下構造調査委員会を組織し、委員会内で随時討議を行って調査業務を遂行するための指針と技術的助言を得た。

本報告書は平成13年度に実施した調査結果について取りまとめたものである。

以下に委員会の構成を示す。

委員長  瀬尾和大  東京工業大学大学院総合理工学研究科   教授

副委員長 今泉俊文  山梨大学教育人間科学部    教授

池田安隆  東京大学大学院理学系研究科・理学部  助教授

石田 隆  山梨大学教育人間科学部   教授

纐纈一起  東京大学地震研究所   助教授

輿水達司  山梨県環境科学研究所   主幹研究員

後藤 聡  山梨大学工学部   助教授

佐藤比呂志 東京大学地震研究所   助教授

年縄 巧  明星大学理工学部   助教授

山口和雄  産業技術総合研究所地球科学情報研究部門 主任研究員

山中浩明  東京工業大学大学院総合理工学研究科   助教授

(委員長・副委員長を除きアイウエオ順、敬称略)

事務局  山梨県総務部消防防災課(防災地震担当)