・ 堆積盆地の形状は、中海に面した米子市安部区を南端とした北傾斜の同斜構造を呈し、境水道から約3km南の地点で、約2500〜3000mの厚さをもつと推定される。
・ 新第三紀中では、明瞭で連続性の良い反射波が卓越しているが,反射波が断続的な部分も存在する。周辺の地質情報から推定して、反射波の連続している部分は新第三紀層の砂岩/泥岩の堆積層を示し、反射波が断続しているのは火山岩などの影響と考えられる。
・ 基盤面相当の反射イベントは、断続的であり、基盤面相当深度での地質構造を反映していると推定される。貫入岩体の存在も考えられる。
・ 弓ヶ浜半島部では、1500mのボーリングにおいても先新第三系の基盤には到達しておらず、その岩質については不明であるが、弓ヶ浜半島の付け根において花崗岩深度が500m程度であることから、弓ヶ浜半島部での花崗岩が基盤岩を形成している可能性が高い。
・ 境港から約2.5km南の地点から北側(境港市の市街地及び島根半島側)では、成層構造を示す連続性の良い反射イベントは見られない。一方、反射法速度解析や屈折法初動解析結果からは、特段の速度異常は認められない。その理由の一つとして、大根島玄武岩(あるいはその延長部)が同区間の浅い部分に存在するために弾性波が散乱し、その下部にある堆積層の反射波が捕捉できていない可能性が考えられる。但し、どの程度の厚さの玄武岩が貫入しているかは、今回の調査データからは良く分からない。
・ 境水道の北側の美保関町宇井地区には、古浦層(中新世)が分布し、地表近くで約3200m/secの速度を示す。一方、境港市北部は、沖積層で被覆され、表層基底では1700m/secの速度を示すことから、その境界で地質構造の急激な変化(垂直変位を伴った断層?)が予想されるが、弱反射ゾーンの存在により境水道付近の詳細な地下構造変化は捕捉できていない。
図1−3に反射法深度断面図を基にした弓ヶ浜半島部の総合解析断面図を示す。
このように境港市の北部地区は、周辺部と比較して以下のような特異な地下構造を示していると言える。
・ 同斜構造をなす北端で最大層厚(約2500m〜3000m)をもつ地点に位置している。
・ 弾性波散乱層が地表付近に存在し、地下の地層境界面が不明瞭である
・ 表層部には、低速度の層が周辺部よりも厚く(約50m)存在する
平成12年10月6日に発生した鳥取県西部地震での異常震度は、これらの地下構造が複合的に作用して生じた可能性が指摘できる。