屈折法・広角反射法調査は、反射法地震探査と並行して実施した。調査作業量(実績)は、次の通りである。表5
(2) 測定作業
屈折法・広角反射法では、各測点(発震点・発破点)に対して、測線の全受振点(1015点)においてデータを取得した。
バイブロサイス震源では、各発震点において、原則として、100回の発震(スイープ)を行った。但し、弓ヶ浜半島部においては、地盤状況や民家からの距離を考慮して、一部の発震点(VP−1002およびVP−1004)では、50回の発震とした。
発破については、次の仕様で、午前0時から3時の間の夜間に実施した。表6
各発破点近傍には、50m間隔で6箇所の受振点を設置し、発破における震源波形観測を行った。
(3) 取得記録の品質
[異常震度域]
弓ヶ浜半島平野部で取得した屈折波・広角反射法の現場記録例を図2−15−1、図2−15−2、図2−15−3、図2−15−4、図2−15−5、図2−15−6に示す。これらの記録例についても、反射法現場記録例と同様に、発震点から受振点までの距離に比例した位置に取得データを表示している。以下、各現場記録例の特徴について記載する。
1) VP−1001 : 図2−15−1
堺港岸壁付近の道路上で発震した記録例である。発震点から約5kmの受振点まで、明瞭な初動が確認できる。初動は約2400m/secの速度を示す。
2)VP−1002 : 図2−15−2
境港市郊外で発震した記録例である。スイープ回数は50回であるが、記録の品質は良好である。発震点から約6kmの受振点まで、明瞭な初動が確認できる。発震点近傍での初動は、約1900m/secの速度を示す。発震点から約1.7km離れた地点から、約2800m/secの速度を示す屈折初動が見られる。さらに、発破点近傍の1秒〜2秒の区間には、明瞭な反射波が確認できる。
3)VP−1003 : 図2−15−3
米子空港付近で発震した記録例である。ほぼ弓ヶ浜半島全体に渡り、初動が明瞭である。発震点近傍での初動は、約1900m/secの速度を示す。発震点から約1.9km離れた受振点から約2400m/secの速度をもつ屈折初動が見られる。
4)VP−1004 : 図2−15−4
米子市郊外で発震した記録例である。スイープ回数は50回であるが、記録の品質は良好である。発震点近傍での初動は、約1900m/secの速度を示す。発震点から北西側では、約1.9km離れた地点から約2500m/secの速度を示す屈折初動が、約3.4km離れた地点から約3600m/secの屈折初動が見られる。一方、発震点の南東側では、約2.3km離れた地点から、約5500m/secの速度をもつ屈折初動が明瞭である。このように、発震点からの初動は非対称形である。また、発震点近傍の地表から約1.5秒の区間までに、反射波が確認できる。
5)VP−1005 : 図2−15−5
米子市郊外で発震した記録例である。スイープ回数は50回であるが、記録の品質は良好である。余震分布域では、地震波の伝播状態が非常に良く、発震点から中海を越え、約11kmの地点まで初動が明瞭である。さらに、発震点から25km〜26km離れた受振点においても、初動が確認できる。発震点近傍での初動は、約2000m/secの速度を示す。発震点の南東側では、約1.3km離れた地点から、約4800m/secの速度をもつ屈折初動が明瞭である。一方、発震点より北西側では、このような屈折初動は見られず、非対称形である。また、発震点近傍の地表から約1秒の区間までに、反射波が確認できる。
6)VP−1006 : 図2−15−6
中海に面した米子市下水処理場付近で発震した記録例である。余震分布域では、地震波の伝播状態が非常に良く、発震点から中海を越え、約26kmの地点まで初動が明瞭である。発震点近傍での初動は、弓ヶ浜半島部で約2500m/sec、余震分布域では、約4200m/secの速度をもつ。また、余震分布域においては、約4秒から8秒の区間に、深部反射波が断続的に確認できる。
[余震分布域]
余震分布域で取得した屈折法・広角反射法データのうち、バイブロサイス震源の現場記録例を図2−15−7、図2−15−8、図2−15−9、図2−15−10、図2−15−11、図2−15−12、図2−15−13、図2−15−14、図2−15−15、図2−15−16に示す。これらの記録例の一般的な特徴は次の通りである。
・ 地震波の伝播状態が良く、ほぼ測線の南端まで初動が到達している。直線距離で25km以上の受振点まで初動が確認できる。
・ 初動は、発震点近傍で約4000m/secを示し、発震点から離れるにつれて徐々に速くなる。発震点から約5km離れた地点で、約5000m/secの速度を示す。
・ 4秒以深で、深部反射波が断続的に確認できる。特に、4秒付近と6秒付近に反射波が卓越している。
発破による屈折法・広角反射法の現場記録を図2−16−1、図2−16−2、図2−16−3に示す。これらの現場記録の特徴は、次の通りである。
1) SP−1 (薬量 100kg)
測線北端の境港から南端の日野町中菅地区まで、測線全体に渡り、初動が明瞭で、記録の品質が極めて高い。深部からの反射波も明瞭である。特に、余震分布域の6秒と10秒付近に、強振幅の反射波群が見られる。
2) SP−2 (薬量 100kg)
SP−1と同様に、測線全体に渡り、初動が明瞭で、記録の品質が極めて高い。発破点から南側では、4秒から5秒の区間に明瞭な反射群が確認できる。ほぼ測線全体の受振点で、6秒から7秒の区間に強振幅の反射波は、発破点より北側の受振点で顕著である。また10秒付近の反射波は、余震分布域の受振点で確認できる。
3) SP−3 (薬量 200kg)
測線南端での発破であり、測線北端の境港の受振点まで初動が明瞭で、記録の品質が極めて高い。ほぼ測線全体にわたり、4秒から11秒の区間で、一連の反射波が見られる。特に、発破点から20km〜30kmの受振点では、7秒から11秒の区間および16秒付近に強振幅の広角反射波が卓越している。