(1)最小位相変換(Minimum Phase Conversion)
バイブロサイス震源のコリレーション処理後の震源波形は、中心部にピークがある時間的に対称な波形である。これはゼロ位相の波形と呼ばれ、 (4)のデコンボリューション処理を行うと波形の歪みが起こる。これを避けるため、既知の震源波形をゼロ位相型から最小位相型の波形に変換するオペレータを設計し、それを原記録に適用する操作を行った。
(2)共通反射点編集(CDP編集)
全記録の発振点・受振点座標を用いて、反射点(発振点と受振点の中点座標)の分布図を作成し、反射点の分布が密な位置を選び、重合測線(CDP測線)を設定した。設定したCDPの数、および最終的に処理に用いたCDPの範囲は以下の通りである。
設定した重合測線の位置を、図2−2−8に示す。
(3)振幅補償(Gain Recovery)
テストの結果、ゲート長1000ミリ秒の自動振幅調整(AGC)を行った。なお、スタック後にも、ゲート長1200ミリ秒の自動振幅調整(AGC)を行った。
(4)デコンボリューション(Deconvolution)
発振点・受振点の特性の相違を補正し、分解能の高いデータを得るためのデコンボリューション処理を行った。
テストの結果、以下のパラメータを採用した。
・ゲート長 :2000ミリ秒
・オペレータ長 : 200ミリ秒
・ホワイトノイズ : 0.5 %
・予測距離 : 36ミリ秒
・時間ゲート : TV
(5)屈折波静補正(Refraction Statics)
全ての現場原記録から初動走時を読み取り、その値から発振点・受振点・表層基底層速度を未知数とするインバージョン(改良タイムターム法)を行い、表層の構造を求めた。この結果を 図2−2−9 に示した。図の上段はタイムターム値と呼ばれる値を示し、中段は得られた表層と基底層の速度、下段は得られた表層構造であり、発振点、受振点の値を示す。横軸は受振点(Loc)番号である。
表層第一層の速度(V1)はタイムターム法からは求めることができず、現場記録の初動を参照して推定する。表層基底層の速度(V2)はタイムターム法により比較的正確に求まる。最終的なV1とV2の値は下記のとおりである。表2−7
この結果は、表層第一層の厚さの変化および標高変化に対する走時変化の補正(屈折波静補正)のデータとして用いた。
(6)速度解析(Velocity Analysis)
定速度重合法(Constant Velocity Stack (CVSK))を用い、100CDP(1250m)毎の地点で速度解析を行った。なお、速度解析は、残差静補正前後で2回行った。2回目の速度解析の結果例を図2−2−10−1、図2−2−10−2、図2−2−10−3、図2−2−10−4、図2−2−10−5、図2−2−10−6、図2−2−10−7、図2−2−10−8、図2−2−10−9、図2−2−10−10、図2−2−10−11、に示す。
図2−2−11−1、図2−2−11−2、図2−2−11−3は、各CDPで速度解析により求められた速度から、深度と速度・往復走時との関係を重ね合わせて表示したものである。反射法速度構造図を図2−2−12に示す。
(7)NMO補正(NMO Correction)
各速度解析点で決定した速度関数(T0,V)を測線方向に内外挿することにより、重合速度構造が得られ、これを用いてNMO補正を行った。この際の波形の伸張が4.0を越えるものについてはミュートを施し、さらに適当な速度での線形ミュートを施した。
(8)残差静補正(Residual Statics)
屈折波を用いた静補正では、比較的長周期の補正値は精度良く補正されるが、短周期の受振点・発振点固有の補正は不十分である。そこで、NMO補正後のデータの反射波を用いた残差静補正を行った。ここで求めた静補正量をNMO補正前のデータに適用し、再度速度解析を行った。
(9)重合(CDP Stack)
NMO補正、残差静補正終了後、各CDP内の反射波走時は同一時間に並び、屈折波・表面波・ノイズ等は同一走時とならない。そこで、これらを足し合わせる(重合する)ことで、S/N比の良い反射記録が得られる。
(10)重合断面図(Final Filtered Stack)
重合後のデータに対して、フィルターテストを行い、以下のフィルターを適用し、最終重合断面とした。
F−X 予測フィルター
ゲート長 91 トレース
オペレータ長 13 トレース
ウィンド長 800 ミリ秒
オーバーラップ 400 ミリ秒
バンドパスフィルター
0.0 〜 2.0 秒 12〜30 Hz
2.0 〜 3.0 秒 8〜25 Hz
3.0 〜 5.0 秒 8〜20 Hz
重合時間断面図を図2−2−13に示す。
(11)重合深度断面図(Depth Conversion)
重合後の記録に対し、速度関数を用いて、時間軸の深度軸への変換を行った。深度変換後のサンプル間隔は2mとした。マイグレーション処理は施されていない。
重合深度断面図を図2−2−14に示す。これは縦:横比が2:1になっている。
(12)時間マイグレーション(Time Migration)
重合断面図上では、反射波は、各CDP位置から反射面までの往復垂直走時がそのCDP位置に表現されている。従って、傾斜した反射面に対しては、重合断面図上の反射面の傾斜位置が、真の構造から若干ずれてくる。これを補正し、各CDP直下の構造形態を表すようにする処理がマイグレーション処理である。
本測線では差分マイグレーション処理を行い、マイグレーション速度は平滑化した重合速度(スケーリング:70%)を用いた。マイグレーション時間断面図を図2−2−15 に示す。
(13)マイグレーション深度変換(Depth Conversion)
マイグレーション後の記録に対し、速度関数を用いて、時間軸の深度軸への変換を行った。深度変換後のサンプル間隔は2mとした。
深度変換後の記録を図2−2−16 に示す。これは縦:横比が2:1になっている。