3−1−1 地下構造モデルの設定

本調査の逆解析では,深部地下構造のみならず,比較的浅部の構造についても配慮した。すなわち,固結シルト層(北多摩層など)の深度分布を境界条件の一部とみなして,地表付近(第1層〜第3層)に低速のS波速度層(≪1.0km/sec)を導入し,第7層以深を地震基盤相当層とする8層水平成層構造モデルを設定した。

図2−2−41は,「その1調査」における調査地点FND,YYG及びCYDについて,前回提出した6層水平成層モデルによる逆解析結果(S波速度深度分布,破線にて表示)と今回提出する8層水平成層モデルによる逆解析結果(同,実線にて表示)とを比較したものである。本図に基づいて,浅部構造モデルを細分化したことによる効果を箇条書きに整理すると,次のとおりである。

・FND地点の基盤上面深度及び上総層群基底深度,及び上総層群相当層以深のS波速度分布は,前回提出結果とほぼ同じであった。

・YYG地点の基盤上面深度は,前回提出結果とほぼ同じであったが,上総層群基底深度は約220m深くなった。また,三浦層群相当層のS波速度は,約0.17km/sec速くなった。

・CYD地点の上総層基底深度は約280m深くなり,基盤上面深度は約120m浅くなった。また,三浦層群相当層のS波速度は,約0.16km/sec速くなった。

総じて,本調査の再解析結果と「その1調査」の提出結果との差は小さく,以後の総合解析等を行う上で支障を来たすものではない。このことについて,perturbationを利用した簡単な検証を行う。

 図3−1−1図3−1−2図3−1−3図3−1−4図3−1−5図3−1−6は,前回及び本調査の計6ヶ所の調査地点毎に,逆解析最終解(8層水平成層モデル)から計算したperturbation(S波速度及び層厚に関するもの)を図示したものである。

「その1調査」報告書(東京都,2003c)にも記したとおり,perturbationの絶対値が大きなモデルパラメータほど,位相速度の変化に強い影響を与える。各図とも,右側の縦軸はperturbationに対する座標軸(注:表示範囲は調査地点毎に若干異なる)である。

本調査で採用した8層水平成層モデルは,「その1調査」の6層水平成層モデルにおいて,第1層をさらに三分割したものに相当する。図3−1−1図3−1−2図3−1−3図3−1−4図3−1−5図3−1−6によれば,第2層以浅に関するperturbationの絶対値は,観測位相速度の周波数範囲でかなり小さい。これは,第2層以浅のモデルパラメータが逆解析計算に寄与する度合いは少なかったこと,即ち,本調査の目的である深部地下構造の推定結果に関しては,「その1調査」の結果も本調査結果も,同程度の確からしさをもつことを意味する。むしろ,本調査で提出(あるいは再度提出)する地下構造モデルは,比較的浅部(深度約0.5km以浅)の地下構造を併せて考慮した結果であるという点で,「その1調査」の結果よりも優れたモデルであると評価してよい。