2−1−4 平成14年度関東平野(東京都)地下構造調査結果

東京都(2003a)は,図2−1−1に示すように,東京都葛飾区から足立区・北区・板橋区を通り,埼玉県和光市に至る直線距離約26q(総延長28q)の測線において,バイブロサイス車を震源とするP波反射法地震探査及びバイブロサイス車4台を震源とする多重発震3ヶ所による屈折法地震探査を行った。東京都(2003a)による調査結果は,以下のとおりである。

P波反射法地震探査結果によると,図2−1−8に示すように,先新第三系基盤上面深度は,調査地東端の葛飾区水元付近で約1,900m,足立区西新井付近で約2,400m,板橋区新河岸付近で約2,000m,調査地西端の幸魂大橋付近で約3,000mを示し,東から西側へ向かって徐々に深くなっている。これに対して,三浦層群相当層上面及び上総層群上面と想定される深度1,500〜1,600m及び300〜500mの反射面は,測線全体にわたってほぼ平坦である。この結果は,周辺の既存調査結果と整合的である。P波速度(重合区間速度)は,下位から三浦層群相当層2.7〜3.1q/s,上総層群1.9〜2.8q/s,下総層群1.7〜1.8q/sと求められたとしている。

また,屈折法地震探査結果によると,3点の発震点で,先新第三系基盤上面に対応する屈折初動と,三浦層群相当層の上面,上総層群上面に対応すると思われる屈折波(屈折初動及び後続波)が確認できた。反射法地震探査解釈結果を参考に4層モデルを仮定したレイトレーシングによる走時合わせを行い,図2−1−9に示すように,先新第三系基盤のP波速度5.5q/s,三浦層群相当層2.9〜3.1q/s,上総層群2.0〜2.3q/s,下総層群1.7q/sと求められたとしている。

一方,東京都(2003a)を基に,一般向けに作成したパンフレット(東京都(2003b))は,基盤岩上面深度について,東京都(2003a)と同様な記述をし,基盤岩の上位には,図2−1−10に示すように,深度300〜500m,1,100〜1,300m,1,500〜1,600m,2,000m付近に比較的連続性の良好な反射面が認められ,千葉県での調査結果を参考にすると,1,500〜1,600mの反射面は三浦層群相当層上面であるとしている。一方,300〜500mの反射面は,近隣の地盤沈下観測井のデータを参考に,上総層群中の厚い泥岩と上位の砂・砂礫互層との境界付近(北多摩層群の上面)あるいは反射面の上位層を東京層群としており,東京都(2003a)と異なった見解を示している。

屈折法弾性波探査の結果によると,基盤層のP波速度は5.5q/sで,千葉県の平成14年度の解析結果5.7q/s,平成12年度の解析結果5.5q/sと調和的で,三波川帯の速度層と考えられる。三浦層群相当層のP波速度は,2.9〜3.1q/s,上総層群及び東京層群のP波速度はそれぞれ2.0q/s,1.7q/sを示し,水平方向にはほとんど変化していないとしている。

なお,東京都(2003b)は,反射法地震探査解釈断面の各層の速度として,屈折法弾性波探査による結果を採用している。