ρ_ｉである（ｉ＝１，２，…，ｎ）。実際の逆解析作業では，数値計算の効率化及び安定化を図るため，未知のモデルパラメータを層厚ｈ_ｉ及びＳ波速度β_ｉの２種類とし，Ｐ波速度α_ｉ及び密度ρ_ｉは松岡・白石・梅沢（２０００）が本調査地域の北部に位置する埼玉県南部地域における微動アレイ解析の際に提案した統計回帰式

β_ｉ＝０．６４α_ｉ−０．５１，

ρ_ｉ＝０．２２α_ｉ＋１．５１，

単位はα_ｉｉ［ｋｍ／ｓｅｃ］，β_ｉ［ｋｍ／ｓｅｃ］，ρ_ｉ［ｇ／ｃｍ３］，

を用いてＳ波速度β_ｉから換算した。

遺伝的アルゴリズムに基づく逆解析計算（筒井・藤本，１９９４；長ほか，１９９９）において，未知のモデルパラメータに係る広域探索範囲は，前出の表２−２−７に示すとおりに設定した。局所探索範囲幅は広域探索範囲幅の１０％とし，遺伝子ビット長は広域探索，局所探索にいずれについても７ビットとした。理論位相速度の計算においては，従来から採用されている「基本モードパワーが最も優勢」の仮定に則り，基本モード分散のみを考慮した。試行５０００回×実験２０回の計算により求めた計２０個の候補解を平均して，最終解とした。

各調査地点毎に求めた候補解及び最終解を，図２−２−３５、図２−２−３６、図２−２−３７に示す。各図の上２図は候補解，同じく下２図は最終解である。各図の右上図及び右下図はＳ波速度深度分布（ただし，第５層までを表示），同じく左上図及び左下図は観測位相速度と理論位相速度との比較である。

図２−２−３８には，各調査地点のＳ波速度深度分布のみ（ただし，第５層までを表示）を一括表示してある。また，最終解に対するモデルパラメータ（層厚，各層上面深度，Ｐ波速度，Ｓ波速度及び密度）を，表２−２−９に一括して示す。

なお，図２−２−３５、図２−２−３６、図２−２−３７の左下図には参考として，最終解を利用して計算した高次モード（１次モード）の理論位相速度（赤色破線）と，各モード毎のｍｅｄｉｕｍ ｒｅｓｐｏｎｓｅ（基本モード＝水色実線，１次モード＝水色破線）とを併せて表示した。高次モードの位相速度，あるいはｍｅｄｉｕｍ ｒｅｓｐｏｎｓｅについては，考察（後節２．２．４）で詳しく述べる。