3−2 検討課題

昨年度および本年度の反射法・屈折法地震探査結果から、基盤深度が3000mを超える首都圏の深部地下構造が次第に明らかになってきた。今回の結果をコントロールポイントとして、今後、周辺の観測井データやブーゲー異常値を基にした基盤深度の面的な補間作業においてその精度の向上が期待される。ただし、首都圏地域で、基盤深度が深いと推定されている未調査地域がまだ残されており、このような地域に対して地下構造調査を引き続き実施し、基盤深度および堆積層速度構造を詳細に把握することが重要である。

S波速度構造についても、微動アレー調査の結果と反射法・屈折法結果を組み合わせる他、周辺坑井のP波速度とS波速度の関係を利用して、3次元速度構造モデルを作成する必要がある。

地下構造調査の成果である速度構造モデルは、首都圏の想定地震に対する地震マップの作成に役立てられることが期待される。推定されたモデルの信頼性を向上させるためには、強震観測データの収集を行って地震動シミュレーションによる評価を行っておくことが望ましい。特に、南関東地震などの巨大地震の強震被害を考える上で、やや長周期地震動が長大構造物に与える影響は注目されており、関東平野における3次元速度構造モデルの高精度化が急がれる。

立川断層の形状については、その下盤側の基盤が今回の調査で初めて明らかにされた。また、初歩的・大略的であるが周辺の既存反射法結果との整合的な解釈が試みられた。今回の調査成果が、活断層調査における基礎資料としても有効に活用されることが期待される。