図2−2−6−2にVP4024(小平市栄町1、20スタック、フォース50%、2台)のショット記録を示す。AGC1000msを施している。初動は、オフセット距離3kmまで追跡できる。上位堆積層からの反射は、1.0秒の反射が顕著である。堆積層からの反射イベントの頂点が西側にずれており、東傾斜の構造が示唆される。既存資料から、埋没する立川断層は、Loc.160辺りに位置すると推定される。これより西方の立川断層上盤側では、基盤のインターセプトタイムは約0.8秒、見掛け速度は、4.5km/sと観測された。一方、これより東方の立川断層下盤側では、基盤屈折波は収録したオフセット距離5km内では確認できない。2秒近くまで反射が存在しており、基盤反射波は、往復走時2〜3秒と思われる。
当地域は、表面波が強く励起され、周辺住宅居住者に不快感を与える程度の振動(振動レベル値70dB以上)が発生しており、居住者とのトラブルを避ける為に、標準として1台フォース30%発振を余儀なくされた。この結果、初動の到達範囲は約1〜3kmに限られ、これらのモニター記録からは1秒を超える深部反射波は確認できない。東大和市〜新座市の約10km区間はこのような発振状態が続くため、深度3km程度と想定される基盤面の連続的なイメージングは困難が懸念される。一方、受振状況は、測線の半分近くで遊歩道を使用しており、そのノイズレベルは昼間で−85dB程度(0dB=3182mV/RMS)であった。この結果、都市部の道路沿いに設置する場合より平均で10dB程度(4倍程度)ノイズが低減している。ただし、広域河川敷(荒川、江戸川)を使用
する場合と比較すると、逆に10dB程度(4倍程度)ノイズが増加している。
図2−2−6−3にVP533(東村山運動公園、30スタック、フォース50%、2台)のショット記録を示す。AGC1000msを施している。初動は、オフセット距離5kmまで追跡できる。今回の測線の鍵層である上総層群下部からの強反射が1.2秒あたりに出現し、これより西方の小平市栄町では1.0秒であったことから、緩やかに東傾斜していると考えられる。基盤反射波は、不明瞭であるが、2.5秒あたりのものと思われる。
図2−2−6−4にVP158(立川市砂川町3、20スタック、フォース90%、ミニバイブ1台)のショット記録を示す。AGC1000msを施している。初動は、オフセット距離1kmまで追跡できる。堆積層からの反射は、1.5秒程度まで確認できる。当地点直下に立川断層が位置すると推定されているが、反射面の不連続等は確認できない。ミニバイブ発振に伴う振動について、振動レベル計による測定では、ベースプレート中心より3m離れた地点(ミニバイブ脇)で90dB、10m先で72dBを記録した。ただし、地盤状況の違いによって異なり、場所によってはミニバイブ脇で100dBを超える地点もあった。反射波のS/Nは、大型バイブロサイス車1台のフォース30%と比較すると、パワーは小さい。
図2−3−1−1にVP1(拝島町、125スタック、フォース90%、4台)のショット記録を示す。AGC2000msを施している。初動は、オフセット距離10kmまでは明瞭である。10kmを超えて初動が不明瞭になるが、この理由として、発振点は立川断層の上盤側であり、初動が下盤側遠方に届くのは波線的に困難であるからだと考えられる。Loc.200から300の区間で、断層による基盤の不連続(東落ち)を示唆する初動走時のズレが確認できる。なお、後述するVP2による逆走時の対応から、基盤からの屈折波は、2.5秒以降の初動であり、それ以前は中間層からの屈折波である。表面波の励起は少なく、150m弱離れた地点における民家への影響は軽微であった(振動レベル約58dB)。
図2−3−1−2にVP2(玉川上水駅北東、100スタック、フォース90%、4台)のショット記録を示す。これは立川断層の下盤側での発振記録である。AGC2000msを施している。初動は、交通ノイズの大きい区間を除いて全区間で追跡できる。特に、基盤からの屈折波が両サイドで明瞭に捉えられており、東方向に5.5km/s、西方向に約6km/sである。また、これらのインターセプトタイムは、それぞれ、2.0秒、1.5秒であり、基盤の東落ちを示唆する。堆積層からの屈折波は、大きく2つに分かれ、それぞれの見掛け速度は、2km/s台、および、3km/s台である。20Hz以下の表面波、S波が強く励起されている。
図2−3−1−3にVP3(小平霊園、150スタック、フォース70%、4台)のショット記録を示す。AGC2000msを施している。初動は、交通ノイズの大きい区間を除いてほぼ全区間で追跡できる。特に、基盤からの屈折波が両サイドで明瞭に捉えられており、見掛け速度は、いずれの方向にも、約5.3km/sである。ただし、Loc.160より西方向では屈折波が弱くなり、その並びが直線的ではなく屈曲している。インターセプトタイムは、2秒程度である。堆積層からの屈折波は、ここでも大きく2つに分けられる。上総層群下部の強反射の双曲線の並びが若干東方向に傾いており、東傾斜が予想される。当地域は、黒目川の水源地周辺であるため地下水位は浅いが、地面とのカップリング等の発振状況は良好であった。表面波の励起は少なく、約30m離れた墓石への影響は皆無であった。
図2−3−1−4にVP4(和光樹林公園前、100スタック、フォース90%、4台)のショット記録を示す。基盤屈折波がオフセット距離8km(Loc.670)から出現し、オフセット距離約13kmまで追跡可能である。この見掛け速度は、5.4km/sであり、インターセプトタイムは、2.4秒である。堆積層からの反射として、垂直往復走時が、1.4秒、1.9秒が顕著である。一方、基盤反射波は、往復走時で2.5秒に局所的に確認できる。
図2−3−1−5にVP5(荒川河川敷、100スタック、フォース90%、4台)では、基盤屈折波がオフセット距離8km(Loc.870)から出現し、オフセット距離約13km(Loc.600)まで追跡可能である。堆積層からの2つの顕著な屈折波が、後続波の中に確認できる。
図2−2−6−5にVP766(東久留米市神宝町、10スタック、ミニバイブ、1台)のショット記録を示す。初動はオフセット距離約0.5kmまでしか確認できない。表面波、S波が強く励起されており、AGC1000msのスケーリングでは初動が見えない。今回の発振では、大型バイブロサイスで発振できなかった区間が全体の4割近くを占めており、その区間ではミニバイブによる補完的な発振作業を行った。このような場所は慨して道が狭く、交通に支障をきたしたり、住宅が隣接していたり、道路の舗装状態が悪いなど発震状況が悪いため、ミニバイブの発振フォースやスタック回数を落とさざるを得なかった。結果的に、バイブロサイス発振のシグナルに比べて、ミニバイブ発振は数十倍パワーが低下している。反射法解析では、両者の違いに留意してスケーリング等を検討する必要があった。
反射法データ取得作業の結果、次のものが得られた。
(1)現場磁気テープ(3490E CARTRIDGE TAPE, SEGYフォーマット) 3巻
(2)同上データシート(Observers Report) 1式
(3)現場モニター記録 1式
(4)発震点・受振点座標/標高値 1式
上記(2)のデータシートは、付録2に添付した。上記(4)の受振器の座標・標高についての測量は、付録5に添付した。