4−4 微動観測点全35地点における地層区分と同一速度層区分

東西及び南北の計9断面において,微動観測点全35地点の地層区分と同一の速度層区分を行った。上記(3)で述べたように,最小二乗法による拘束条件付きの全観測点同時解析を採用したことによって,各断面上では,反射法地震探査結果や既存ボーリングデータと大きく矛盾しないように地層区分を行うことができた。なお,各解析断面に記載した既存ボーリングの位置は,2章の図2−5−2に示した。

S波速度構造は7層に区分され,表層から深部に向かって第1層,第2層・・・第7層と名付けた。各観測点間で同一番号の速度層のS波速度を比較すると,一部の観測点を除いてほぼ同じとなることから,これら同一番号の速度層を結んでS波速度構造を区分した。これを同一速度層区分と呼ぶことにする。同一速度層区分の結果は,後述する3次元地下構造モデル(物性値モデル)の基礎データとなるものである。

地層区分及び同一速度層区分を行ったS波速度構造の断面の位置を図4−4−1に,各断面図を図4−4−2図4−4−11に示すとともに,各断面の特徴を以下に述べる。なお,平成16年度〜平成14年度反射測線近傍断面の地層区分は,上記(3)で示した図と同じである。

(ア) 平成16年度反射測線近傍断面(図4−4−2

第四系〜当別層(西野層)上部に対応する第1〜第3層はほぼ水平に分布する。当別層(西野層)以深の地層は北へ傾斜しているが,同一速度層区分でも第4層以深の速度層は同じような分布傾向を示している。

(イ) 平成15年度反射測線近傍断面(図4−4−3

第四系〜当別層(西野層)上部に対応する第1〜第3層はほぼ水平に分布する。測線中央付近から東側では,当別層(西野層)以深の地層は東へ傾斜するが,同一速度層区分でも第4層以深の速度層は同じような分布傾向を示している。

(ウ) 平成14年度反射測線近傍断面(図4−4−4

測線中央付近から西(南)側では,地層と速度層はほぼ同じような分布形状になっている。地層が月寒背斜から大きく沈み込んでいく東(北)側では,第4層以深の速度層が東へ傾斜しているものの,その下降傾向は第7層を除いて地層の変化ほど大きくはない。

(エ) 東西断面1(図4−4−5

地層は全体に東へ緩く傾斜する。速度層もこれとほぼ同じ分布形状を示す。第2層下面がほぼ第四系基底に,第3層下面〜第4層下面が当別層(西野層)基底に対比される。

(オ) 東西断面2(図4−4−5

地層は全体に東へ緩く傾斜する。測線中央付近から西側では,地層と速度層の分布形状は同じである。測線東側では,第4層以深の速度層が地層と同じように東に傾斜しているが,第3層以浅の速度層はほぼ水平に分布する。

(カ) 東西断面3(図4−4−6

地層は全体に東へ傾斜しているが,測線中央付近からその傾斜が大きくなっていく。測線西側では,地層と速度層はほぼ同じような分布の傾向を示している。

地層が豊平川右岸側の低重力域に近いNo.25にかけて大きく沈み込んでいく東側では,各速度層も東へ傾斜しているものの,その下降傾向は第7層を除いて地層の変化ほど大きくはない。

(キ) 東西断面4(図4−4−6

地層は全体に東へ緩く傾斜する。速度層もこれと同じ分布の傾向を示している。

(ク) 東西断面5(図4−4−7

地層,速度層ともほぼ水平あるいは東へ緩く傾斜する分布の傾向を示している。

(ケ) 南北断面1(図4−4−8

地層は緩やかな起伏を持つが,全体には水平に近い分布を示している。第2層下面がほぼ第四系基底に,第3層あるいは第4層下面が当別層(西野層)基底に対応している。

(コ) 南北断面2(図4−4−9

地層は全体に水平に近い分布を示している。第2層下面あるいは第3層下面がほぼ第四系基底に,第3層あるいは第4層下面が当別層(西野層)基底に対応している。

(サ) 南北断面3(図4−4−10

地層は全体に水平に近い分布を示している。第2層下面がほぼ第四系基底に対応するが,月寒背斜西側の向斜部に当たるNo.12,No.24では第3層下面が第四系基底に対応し,第4層下面がほぼ当別層(西野層)基底に対応する。

(シ) 南北断面4(図4−4−11

地層は豊平川右岸側の低重力域に近いNo.13,No.25で周辺よりもかなり深い分布となっている。速度層も同じような傾向が見られる。その下降傾向は第7層を除いて地層の変化ほど大きくはない。当別層(西野層)の最深部はほぼ豊平川付近になるが,地震基盤(定山渓層群)面の最深部はそれよりも南にずれている。