4−3−2 平成16年度における反射法地震探査結果と微動アレー探査結果との比較・検討

平成16年度反射測線近傍には,平成13年度及び平成14年度調査で実施した微動観測点No.13,No.29及びNo.30がある。本章(1)の再解析で得られたそれらのS波速度構造を反射断面の地層区分と重ねて図4−3−1に示す。平成16年度反射法地震探査結果や重力線(ブーゲー重力異常)の分布を参考にして,平成15年度と同様に拘束条件を設定した微動解析を行ったことにより,反射測線近傍のS波速度構造を,反射断面の主要な地層境界面である第四系基底,当別層(西野層)基底及び地震基盤面(定山渓層群)とほぼ矛盾しないように区分することができた。

また,平成15年度及び平成14年度の反射断面は,平成16年度の反射法地震探査結果に基づいて再解釈を行っているが(2章参照),そこでも反射測線近傍のS波速度構造を主要な地層境界面とほぼ矛盾しないように再区分することができた。その結果を図4−3−2図4−3−3に示す。

平成15年度反射測線近傍断面(図4−3−2)における地層区分の変更点は次のとおりである。

反射測線東端部付近では,平成16年度反射法地震探査結果に基づいて,反射断面の当別層(西野層)基底を平成15年度よりも浅く再解釈した。測線東端部に比較的近い微動点No.13のS波速度構造の平成15年度地層区分では第4層と第5層を当別層(西野層)に対比させていたが,この反射断面の解釈変更に伴い,第4層のみを当別層(西野層)に対比させた。

平成14年度反射測線近傍断面(図4−3−3)における地層区分の変更点は次のとおりである。

反射測線北東端部付近では,反射断面の第四系(材木沢層)基底を平成15年度よりも深く再解釈した。測線北東端部に比較的近い微動点No.25のS波速度構造は,平成15年度地層区分では第1層と第2層を第四系(材木沢層)に対比させていたが,この反射断面の解釈変更に伴い,第1層から第3層までを第四系(材木沢層)に対比させた。

微動S波速度構造の各速度層(第1〜第7)と反射解釈断面図の各地層とは次のような関係にある。

(ア) 第四系

大部分の観測点では,第1層と第2層(S波速度:0.2〜0.9km/s)が第四系に対比されるが,豊平川右岸側の低重力域(白石区東米里付近)に近いNo.13,No.25や月寒背斜西側の向斜部に位置するNo.12,No.24のように周辺よりも第四系が厚く分布するところでは,第3層(S波速度:1.0〜1.3km/s)まで含めて第四系に対比される。

(イ) 当別層(西野層)

大部分の観測点では,第3層あるいは第3層〜第4層が当別層(西野層)に対比さ

れ,S波速度は1.0〜1.6km/sの範囲にある。豊平川右岸側の低重力域に近いNo.13,No.25や月寒背斜西側の向斜部に位置するNo.12,No.24のように周辺よりも当別層(西野層)が深くあるいは厚く分布すると推定されるところでは,第4層あるいは第4層〜第5層が対比され,S波速度は1.4〜2.0km/sとなる。

(ウ) 望来層,盤の沢層,厚田層など

分布深度が深くなるほどS波速度が大きくなるという傾向は,第四系や当別層(西野層)ほど明瞭ではないが,平成15年度反射測線近傍断面(図4−3−2)では,分布深度が深くなるにしたがって,望来層,盤の沢層,厚田層などに対比される速度層が第4層〜第6層(S波速度:1.5〜2.6km/s)から第5層〜第6層(S波速度:2.0〜2.6km/s)と移り変わっていく。また,平成14年度反射測線近傍断面(図4−3−3)では,豊平川右岸側の低重力域に近いNo.25において,他の微動観測点ではほぼ第5層〜第6層(S波速度:1.9〜2.7km/s)がこれらの地層に対比されるのに対して,第6層(S波速度:2.5km/s)のみがこれらの層に対比される。

(エ) 地震基盤(定山渓層群)

微動アレー探査結果の第6層と第7層の境界面が地震基盤(定山渓層群)面に対比される。S波速度は3.0〜3.4km/sである。

以上のように,最小二乗法による拘束条件付きの全35地点同時解析を採用したことによって,反射測線近傍における微動アレー探査結果(S波速度構造)を,微動観測点が反射測線からある程度離れていることも考慮すれば,反射断面の地層区分とほぼ矛盾しないように区分することができた。また,反射法地震探査結果と同じように,地層の分布深度が大きく変化するところでは,同じ地層でも深いところほど大きなS波速度が分布する傾向が現れる結果となった。