S波速度構造を把握する方法には,微動アレー探査法のほかにS波反射法,ボーリング孔を利用するPS検層などがある。しかし,これらの方法には,@地下深部までの探査能力が低い,A市街地での適用にしばしば制約を伴う,などの問題がある。さらに,今回のように広範囲の調査領域を対象とする場合,その調査期間,調査経費などを考えると,これらの方法の適用は現実的ではない。
一方,微動アレー探査法には,得られるS波速度構造は水平成層構造で近似され,P波速度構造の把握を目的とする反射法地震探査よりその精度は低くなるなどの問題がある。しかし,深度1000m以深の探査能力があり,適用面でもほとんど制約がないという優位性は高く,さらに短期間に比較的少ない経費で目的に応えることのできる技術的内容を備えていることから,今回の調査には適した探査法と言える。