フィールドモニター記録を,図4−4−1−1、図4−4−1−2、図4−4−1−3、図4−4−1−4に示す。各受振データは発震点からの直線距離に比例した位置にプロットされている。
(ア) VP−1;図4−4−1−1
発震点から距離にして約12km地点(受振ラインの西端)までは初動となる屈折波は明瞭であるが,それより西側の独立観測点では不明瞭である。発震点近傍での弾性波の減衰が起因していると考えられる(逆方向のVP−4の記録では,測線の東端まで屈折初動が明瞭)。
初動走時の見かけ速度は,発震点からの水平距離2〜5kmの区間では, 約2,300m/s,5〜10kmの区間では約4,000m/s,10〜12kmの区間では約6,000m/sとなっている。
(イ) VP−2;図4−4−1−2
独立観測点を含め,全受振点で初動は明瞭であり,記録の品質は良好である。初動の見かけ速度は,発震点の西側が東側と比較して速くなっている。発震点からの水平距離にして5km以上離れた区間に関し,発震点の西側では約3,900m/sを示すのに対し,東側では約3,000m/sを示す。この相違は、地層面の傾斜の影響と考えられる。
(ウ) VP−3;図4−4−1−3
独立観測点を含め,全受振点で初動は明瞭であり,記録の品質は良好である。初動の見かけ速度は,発震点からの水平距離が大きくなるにつれて徐々に速くなる傾向があり,8km以上離れた地点では約4,200m/sを示す。
(エ) VP−4;図4−4−1−4
独立観測点を含め,全受振点で初動は明瞭であり,記録の品質は良好である。発震点から測線東端の受振点までの水平距離は約18kmであり,弾性波の伝播状態は非常に良い。VP−3と同様に,初動の見かけ速度は,発震点からの水平距離が大きくなるにつれて徐々に速くなる傾向があり,10km以上離れた地点では約4,800m/sを示す。
イ 走時曲線
測定記録から読取った初動走時に対し距離補正(発震点−受振点間の実距離と投影測線上での距離の差に関する補正)を施した後,走時曲線を作成し,見かけ速度を求めた。投影測線を図4−4−2に,走時曲線を図4−4−3に示す。これから比較的浅部のP波速度は2000〜3000m/s程度,その下に4000m/s程度,基盤が5000〜6000m/s程度と読み取れる。
ウ 走時曲線の傾きから求められた基盤のP波速度について
測線下の速度構造を傾斜2層構造と仮定し,発震点VP−1及びVP−4の走時曲線の内,基盤を伝播してきた屈折波の走時と判断した範囲の見掛けP波速度から下層の速度を求めると(上層の速度を約3000m/sと仮定),平成14年度と同じように5500m/s前後の値が得られた。基盤の傾斜角度としては5度程度の値が得られた。
エ レイトレーシング解析
波線追跡プログラムを用いてレイトレーシングを行い,試行錯誤的に速度構造モデルの速度あるいはモデルの形状を微調整しながら,理論走時と観測走時を合わせ,最終的な速度構造モデルを求めた。初期モデルの形状は反射面の分布から解釈した地層構造に基づいて設定し,各層の速度は反射速度解析から得られた区間速度を参考にして設定した。なお,各層内の速度は,測線に沿った深度変化も考慮して,側方に変化させたこのような初期モデルに対して,各層の速度・形状・深度を試行錯誤的に修正することを繰り返しながらレイトレーシングを行い,観測走時を概ね説明できる最終モデルを得た。図4−4−4−1、図4−4−4−2、図4−4−4−3、図4−4−4−4には,各発震点について理論走時と観測走時及び波線経路を示す。
最終的に得られたモデルにおける各地層のP波速度は,第四系が1700〜2100m/s程度,当別層(西野層)が2000〜3800m/s程度,望来層・盤の沢層・厚田層などが2800〜4300m/sである。基盤のP波速度は,平成14年度とほぼ同じ5500〜5600m/sである。