ア 調査測線
測線の設定にあたっては,
@札幌市の比較的中心部に近いところを通ること
A民家などから離間距離をある程度取って設定できること
B想定される褶曲構造などを横切ること
などを考慮し,北区屯田町から百合が原公園横,空港通りを経て豊平川を横断し,白石区東米里に至る約12kmの測線を設定した(前掲,図3−1−1,図3−1−2参照)。
イ 受振器設置作業
調査測線に沿って設置した木杭を目印にして,受振器,データ伝送装置(RSU)及び本線ケーブルを敷設した。各受振点において,9個の受振器(小型地震計)を約2m間隔に設置した。データ伝送装置を4受振点ごとに配置するとともに,データ伝送用の本線ケーブルを測線に沿って敷設した。測線は大部分が一般道路に沿っているため,受振器は,原則として路肩の植え込みなど土の部分に固定した。受振点の周りに土が露出していない場合は,スタンドを用いて設置した。測線が交通量の多い交差点を横断する場合には,付近の電柱を利用してケーブルを道路上空で渡した(図3−2−1)。交通量がさほど多くない交差点では,ケーブルをゴム製のカバーで覆って道路上を渡した。
ウ 発震及びデータ取得作業
発震作業は,起震車(図3−2−1)4台(標準)を用いて,道路上で実施した。本測定作業に先立ち,測線中央部に近い札幌市スポーツ交流施設「つどーむ」(Loc.No.310付近)に面した道路上でパラメータテストを実施し,スイープ周波数を8〜40Hzの範囲に決定した。パラメータテスト終了後,直ちに本測定作業を開始した。
測定作業中は,起震車の前後に警備員を配置して,交通事故や近隣居住者とのトラブルが発生しないよう対処した。人家の近い場所や地盤状態の良くない地点などでは,振動の影響を考慮して,起震車の台数やスイープ回数を調整した。
各発震に対して,測線の端では受振器8km(320チャンネル)の固定展開で,測線中央部では発震点から東方向に受振器5km(200チャンネル),西方向に受振器3km(120チャンネル)の振り分け展開で測定した。測定データに対し,データ伝送装置(RSU)内でデジタルデータへの変換とスイープ信号との相互相関処理を行い,本線ケーブルを通して観測車のデータ収録装置に伝送した。図3−2−2にその模式図を示す。
<震源系>
反射法地震探査の震源として使用した起震車の発震方法について記載する。起震車(大型バイブロサイス車)に搭載されたバイブレータは,制御エレクトロニクス内の発振器の作り出した基準信号(連続的に周波数が変化するスイープシグナル)に従って,
油圧により地面に密着させたベースプレート上のピストンを振動させ,その反力により地面に振動を与えるタイプの震源である。通常,車両に搭載され,発震点間を迅速に移動することができるので,非常に作業効率が良い。また,エネルギーを連続的な動きとして,分散して与えるので,舗装道路上でも損傷を与えることなく使用することができる。車体重量をベースプレートにかけて振動させることで,地面とのカップリング効果を高めている。受振記録に対して,スイープシグナル(基準信号)との相互相関処理を行い,発破のようなインパルス震源と同等な記録となる。
エ 探査仕様
<測線>
・測線長 :12km
<震源系>
・起震車(大型バイブロサイス車) :標準4台
・発震点間隔 :標準100m
・スイープ長 :20sec
・スイープ周波数 :8〜40Hz
・スイープ回数 :標準20回
・総発震点数 :129点
<受振系>
・受振器 :上下動,SM−7
・受振器の固有周波数 :10Hz
・受振器数/受振点 : 9個
・受振点間隔 :25 m
・総受振点数 :507点
注)総受振点数は,交差点や川などにより受振器の設置ができなかった受振点(Dead受振点)を除いた有効受振点数
<記録系>
・データ収録装置 :GDAPS−3(デジタルテレメトリー型)
・サンプル間隔 :4 msec
・記録長 :8 sec(相互相関処理後)
・チャンネル数 :320(同時受振チャンネル数)
オ 主要機材
・起震車(大型バイブロサイス車) :IVI社,MK4/Y−2400 4台
・データ収録装置 :GDAPS−3 デジタルテレメトリー方式 1式
・RSU(データ伝送装置) :120個
・バッテリー (含む充電器) :240個
・本線ケーブル :120本
・受振器 :SM−7(固有周波数10Hz) 481組
・遠隔発震制御装置 :1式
・車両 :観測車,整備車,資器材運搬車など