5−4−3 走時曲線の傾きから求められた基盤のP波速度について

発震点SP−1及びSP−2の走時曲線の内,基盤を伝播してきた屈折波の走時と判断した範囲の走時曲線の傾きから見掛けP波速度を見積もると,ばらつきはあるが図5−4−2に示すように,前者が約5000m/s,後者が約6500m/sとなる。この付近の基盤は,全体的にはSP−1からSP−2に向かってゆるく傾斜しているとみることができることから,地下構造が下り傾斜になるSP−1の走時曲線の見掛け速度が,上り傾斜になるSP−2の走時曲線の見掛け速度よりも小さいことは矛盾がない。

そこで,測線下の速度構造を傾斜2層構造と仮定し,上層の速度を約3000m/sとして上記の見掛け速度から下層(基盤)の速度を求めると,5500m/s前後の値が得られた。また,下層の傾斜角度としては5度程度の値が得られた。

基礎試錐「石狩湾」の音波検層結果(石油公団,1995)からは,本調査地域で基盤と想定した定山渓層群(深度3200〜3800m)のP波速度の範囲が,4800〜5400m/s程度(平均値約5100m/s)と読み取れる。今回得られた速度5500m/sは,この範囲の上限値に近い値である。