その一方で,比較的近接する観測点のモデル同士を関連付けて,調査地域全体にわたる3次元モデルを構築しようとしたときに,各観測点間の対応が取れない個所があるという問題が残った。
逆解析は6層モデルで行っているが,各観測点を関連付けるためには,対応させようとする層同士は,ほぼ同じS波速度を持っていることが望ましい。そのためには,平成13年度の逆解析で用いたS波速度の探索範囲では広すぎると考えられる。そこで,探索範囲の再設定を行った。設定方法を以下に記す。
@ 各層におけるS波速度探索範囲を狭く設定して,対応する層同士でS波速度が十分に近くなる速度範囲とする
A 各層のS波速度範囲が,その上下の層のS波速度とオーバーラップしないようにして,S波速度が各層の間でコントラストを持つようにする。
この方法に依った場合,各観測点で得られたモデル同士を同じ層番号で対応させることにより,同程度のS波速度を持った層の分布を3次元的に構築することが可能である。
一方で,探索範囲を狭く設定したために,観測位相速度を十分に満足させられるモデルを得ることができないことも考えられる。また,S波速度探索範囲を狭くしたために,その影響が層厚に及んで,平成13年度結果とは,大きく異なるモデルが得られることも考えられる。
そこで,S波速度探索範囲は,平成13年度の微動アレー探査結果によるモデルを参照して設定した。この方法による解析で問題が発生した場合には,その都度対応していくこととした。今回用いた探索範囲を表3−6−1に示す。
類似の手法が金沢平野でも試みられている(神野ほか,2002)。ここでは,S波速度を固定して解析を行っているが,本調査ではS波速度を固定することまではせずに,多少の範囲を持たせて解析することとした。