原因としては,@微動信号の大きさ(パワーと呼ぶ)の低下,Aブロック長が低周波数成分を解析するには短すぎる,BSPAC法に特有のVARIANCEの急激な増加(松岡ほか,1996)などが考えられる。また,高周波数側に関しては,アレーサイズによるエイリアジングのためである。
これらの原因からある相関距離で解析可能な波長には限界があって,宮腰ほか(1996)の報告や今までの経験から,解析可能な最大波長は相関距離の10倍程度と考えている。これを(4)エで述べた位相速度の推定式
ρ(f,R) = J0(2πfR/c)
で考える。ここで各記号の意味は(4)エと同じである。また,
f/c = 1/λ
とおくとλは波長である。推定最大波長を相関距離の10倍とするとλ=10Rなので上式に代入して
ρmax=ρ(f,λ=10R) = J0(0.2π)≒0.9037
を得る。一方,最小波長に関しては空間的エイリアジングから相関距離の2倍である。
同様にして
ρmin=ρ(f,λ=2R) = J0(π)≒−0.3042
を得る。このことからρmax≧ρ(f,R)≧ρminを満たす空間自己相関係数の中から検討することとなる。図3−5−3−1、図3−5−3−2、図3−5−3−3中にρmaxを破線,ρminを2点鎖線で示してある。