3−5−3 空間自己相関係数

図3−5−3−1図3−5−3−2図3−5−3−3に例としてNo.27観測点における相関距離別の空間自己相関係数を示す。係数値を実線,その分散を点線で示してある。ここでは全体的に分散の小さい結果を得ることが出来た。これは,全体的にノイズレベルの小さなデータを取得することができたことを意味していると考えられる。なお,解析に使用できる周波数範囲は低周波数側に見られる最初の極大値付近の周波数から,それより高周波数側にある最初の極小値付近の周波数までである(岡田,2001)。解析できる周波数に限界があるのは,低周波数側に関しては,周波数が0に近づくにつれて多くの場合,理論から期待される値,1に漸近せず減少する傾向があるためである。これは図3−5−3−1図3−5−3−2図3−5−3−3にも現れている。

原因としては,@微動信号の大きさ(パワーと呼ぶ)の低下,Aブロック長が低周波数成分を解析するには短すぎる,BSPAC法に特有のVARIANCEの急激な増加(松岡ほか,1996)などが考えられる。また,高周波数側に関しては,アレーサイズによるエイリアジングのためである。

これらの原因からある相関距離で解析可能な波長には限界があって,宮腰ほか(1996)の報告や今までの経験から,解析可能な最大波長は相関距離の10倍程度と考えている。これを(4)エで述べた位相速度の推定式

 ρ(f,R) = J(2πfR/c)

で考える。ここで各記号の意味は(4)エと同じである。また,

 f/c = 1/λ

とおくとλは波長である。推定最大波長を相関距離の10倍とするとλ=10Rなので上式に代入して

 ρmax=ρ(f,λ=10R) = J(0.2π)≒0.9037

を得る。一方,最小波長に関しては空間的エイリアジングから相関距離の2倍である。

同様にして

 ρmin=ρ(f,λ=2R) = J(π)≒−0.3042

を得る。このことからρmax≧ρ(f,R)≧ρminを満たす空間自己相関係数の中から検討することとなる。図3−5−3−1図3−5−3−2図3−5−3−3中にρmaxを破線,ρminを2点鎖線で示してある。