GAは広域的な探索空間から効率的に適用度の高い解を求める方法として用いられている。この手法の最大の特徴は,初期モデルが必要でないことである。繰り返し計算で漸次残差を小さくしていく最小二乗法のような逆解析法では,出発モデルとしての初期モデルが必要である。一方,GAの場合,ある程度の解の存在予想範囲が把握できれば,その中でアルゴリズムに従って,その範囲内でデータを満足する解を探索することができる。ただし,GAは局所的残差最小部が多数存在する問題(多峰性問題)では適用が困難な場合もある。
このような局所的残差最小部が多数存在する問題に対応するために,個体群探索分岐型遺伝的アルゴリズムが提案された(長ほか,1999)。欠点としては,解を得るための十分な探索を必要として,また計算量も膨大となることである。
また,fGAでは解析を行った数(実験回数と呼ぶ)だけモデルを得ることができる。得られたモデルは,通常,モデルを得るまでの解析で十分な数の分岐を行わせれば,
解析された位相速度を満足させるものとなることが多い。場合によっては,複数回の実験で類似性が少ないモデルが得られても,それらのモデルがすべて解析された位相速度を満足させることができるということもありうる。
この解析された位相速度を満足させることができるモデルは,最適モデル(最適解)となりうる必要条件を満たしているので,候補解と呼ぶこととする。候補解から最適解を選定または推定していくためには,ボーリング調査などによる速度情報のような独立した情報が必要となる。
解析パラメータとして,解析モデルの層数及び各層における層厚とS波速度の探索範囲とを設定する。図3−4−3にS波速度構造解析の流れ図を示す。