6−2−1 地質断面による検討

ボーリング資料などの地質データをもとに地質断面図を作成した。本調査における目的の1つは深部の地震基盤を把握することである。文献調査の結果,S波速度が概ね3q/sとなる奔須部都層下部礫岩,定山渓層群および先新第三系を以下,「地震基盤」と称する。地震基盤に到達しているボーリング孔は,本調査地域の周辺のみで,本調査域内にはなく,深部に関しては信頼性のある断面図を作成することが困難である。ボーリング資料などでカバーできない箇所における地震基盤の把握は,各種物理探査を用いて行っていくことになるが,物理探査データから深部構造を推定して行くには,まず浅部の解析精度を上げる必要があり(例えば,反射法における静補正,微動アレー探査におけるモデルの逆解析など),そのためには,比較的浅部の地質情報,特にボーリングデータを集めて整理することが重要である。また,これらは,総合解析の際に必要となる各種物理探査結果の地質的な解釈の際に有用な資料ともなる。

上記のような理由から,深部ボーリングデータのみでなく,比較的浅部(1,000m以浅)のボーリングデータも用いて,石狩平野北部の地質断面図を作成した。図6−1に地質断面位置図を示す。各断面線は文献調査で収集された主要なボーリング位置を結んで設定した。各地層境界は,各ボーリングにおける確認深度と周辺の地層分布データを参考に推定した。また,ボーリング到達深度以深の地層境界は,深部ボーリングで得られている層厚が変化しないものとした。図6−2図6−3に想定した各地質断面を示す。地質断面図の中には平成14年度計画における反射法予定測線付近の断面も示してある。

地質断面(1−1)は基礎試錐「石狩湾」―西茨戸SK−1―茨戸SK−1―中沼観測井―野幌SK−1を結ぶ,北西から南東に縦断する断面図である。北西端の基礎試錐「石狩湾」の盤ノ沢〜厚田層相当層は火山砕屑岩を主とした岩相を示しているが,西茨戸SK−1付近から南東では非火山砕屑性の砂岩・泥岩から成る堆積岩相を示している。地質構造は,石狩平野北部の油田地帯にみられる,緩やかな向・背斜構造の繰り返しが認められる。地震基盤と推定される定山渓層群は,基礎試錐「石狩湾」と西茨戸SK−1で確認されている。野幌SK−1では奔須部都層までしか確認されていないが,東方約11kmにある基礎試錐「南幌」では,奔須部都層の下位に先新第三紀地層の隈根尻層群を確認している。

地質断面図(2−2),図(3−3)および図(4−4)の3本の断面図は,いずれも南西−北東方向の断面で,地質断面図(1−1)に概ね直交する断面図である。これら3本の断面図は,分布する地層の岩相構成と基盤岩の分布深度に同じ傾向が認められる。すなわち,地層の岩相構成では,東部に分布する地層(当別層から厚田層)は非火山砕屑性の堆積岩を主とし,西部に分布する地層(西野層と小樽内川層)は火山砕屑岩類を主としている。石狩平野西部では,地震基盤と推定される定山渓層群を直接確認したデータはないが,上位地層の分布傾向と重力データなど現在入手し得る資料から推定すると,東から西に浅くなる傾向がある。

図6−2 地質断面図1

図6−3 地質断面図2