3−6 まとめ

本年度は,21観測点で微動アレー探査を実施した。結果を以下にまとめる。

・アレーの設定は,設定の際に有用となる速度構造に関する情報が本調査地域では乏しいことから,過去に本調査地域で実施された微動アレー探査結果や他の地域における地下構造調査で実施された微動アレー探査の結果を参照して半径100〜2,000mのアレーとした。そして,アレーを三重正三角形で構成し,大アレー(最大半径2,000m)と小アレー(最大半径400m)の2種類設定した。

・観測は夜間に実施した。そのため,観測点により交通ノイズの状況などの条件が異なるものの,概ね良好な記録が取得できたものと考える。

・解析方法に関して,SPAC法とf−k法との比較検討を行った。その結果,f−k法の解析結果では解析手法上の弱点に起因すると考えられる解析結果の不安定さが確かめられた。そのため,本調査ではSPAC法を用いていくこととした。そして全21観測点の位相速度を解析した。その結果,解析で得られた位相速度の分布が調査地域の西側におけるグループと東側におけるグループに二分されることが分かった。

・個体群探索分岐型遺伝的アルゴリズム(fGA)を用いて解析で得られた位相速度から各観測点におけるS波速度構造を推定した。解析結果については,PS検層実施点付近や,既往微動アレー探査実施点付近の観測点の解析結果を用いて,PS検層や既往微動アレー探査結果と比較検討を行い,整合性を確認した。図3−19に,微動アレー探査で推定した全21観測点のS波速度構造を示す。

・微動アレー探査結果の文献調査結果による地質層準との対応や,それによる全体的な地下構造モデルの構築などは,総合解析において検討する。