(2)既存微動アレー探査結果との比較検討

No.9観測点の付近では,北海道大学・ほかによる微動アレー探査が行なわれている(笹谷ほか,2001)。そこで,微動アレー探査結果における再現性の有無を検討した。それを図3−17に示す。上図が,それぞれ観測から得られた位相速度,下図が,それぞれ推定されたS波速度構造と,それに対応する理論位相速度である。観測から得られた位相速度を比較すると,1Hz付近で若干異なるものの,ほぼ同じ値が得られていることが分かる。また,S波速度構造については,部分的に食い違いがあるものの地下構造全体としては大局的には,よく一致しており,これより,微動アレー探査結果がうまく再現できたことを確認することができた。

S波速度構造に見られる部分的な食い違いに関して考察すると,この構造から得られた理論位相速度は,0.4Hz付近および1Hz付近で差異が見られる。この周波数での位相速度は,それぞれ1.2km/s,0.7km/sであるので,波長で考えると,それぞれ3km(1.2km/s/0.4Hz),0.7km(0.7km/s/1Hz)となる。位相速度が波長の,ほぼ半分の深度における地下構造を反映しているとすると,0.4Hz付近および1Hz付近での理論位相速度の違いは,それぞれ深度1.5km,0.35km付近の推定構造の違いから生じていると考えられる。一方,深度3km付近に見られる違いに関しては,理論位相速度では,0.28Hz付近(1.7km/s)に相当する。この周波数における理論位相速度には違いが見られない。このことにより,深度3km付近に見られる違いは,構造を逆解析する際の数値計算上の違いで,観測データの違いを反映したものではないと考えられる。