解析層数:6
探索範囲1(調査検討範囲西側山麓付近の観測点)
層 層厚(m) S波速度(m/s)
1 20 〜 200 100 〜 400
2 30 〜 200 200 〜 600
3 200 〜 1000 1000 〜 2000
5 500 〜 1500 1500 〜 2700
6 − 2500 〜 3500
探索範囲2(調査検討範囲中央部,東側の観測点)
層 層厚(m) S波速度(m/s)
1 50 〜 300 100 〜 600
2 100 〜 1000 400 〜 1200
3 300 〜 1300 500 〜 1500
4 500 〜 2000 800 〜 2000
5 500 〜 2000 1200 〜 2700
6 − 2000 〜 3500
解析では,S波速度構造の候補解を10個求めることとした。観測点No.8における例を図3−13に示す。図中,上右側が推定S波速度構造の候補,上左側が図右側の構造によるレイリー波基本モードの理論位相速度である。また,観測データから得られた位相速度を○印で示してある。この結果では,10個のS波速度構造モデルは全て解析された位相速度に十分適合している。よって,この10個のS波速度構造モデルは全て候補解となりうる。データ解析の項で述べたように候補解から最適解を選定または推定していくためには,ボーリング結果や反射法結果などの独立した情報のあることが望ましい。本年度は,反射法結果がないため,そのような手段による最適解の推定は難しい。そこで,解析された位相速度に適合する,これらの候補解を参照しながら,これも参考にし得る別種のデータ,すなわち重力データを考察し,その地域的傾向と整合するように1個の候補解を最適解として選定した。また,そのときに微動探査全21地点の構造のバランスも考慮した。すなわち,近傍の観測点で構造が急変しないように考慮した。最適解の構造と,そのレイリー波基本モードの理論位相速度は黒濃線で示してある。最適解については,反射法による地下構造が得られた後,再度考慮する必要があろう。
図3−13中,下右側が観測点No.8において選定した最適推定S波速度構造,下左側が図右側の構造によるレイリー波基本モードの理論位相速度である。最適解を残差最小ではなくて,上で示した検討結果を用いて選定した。そこで,最適解による理論位相速度と観測データから得られた位相速度との残差を調べた。それが最下図に示してある。残差の定義には以下の式による相対残差を用いた。
E=|Cobs−Ccal|/ Cobs
ここで,Eが相対残差,Cobsが観測値,すなわち解析で得られた位相速度,Ccalが計算値,すなわち理論位相速度である。この結果から,No.8では,0.25Hz付近,1Hz付近で0.05,すなわち約5%の相対残差があるが,それ以外では,相対残差は,0.02,すなわち,ほぼ2%以下である。
全観測点の解析結果を図3−14−1、図3−14−2、図3−14−3、図3−14−4、図3−14−5、図3−14−6、図3−14−7、図3−14−8、図3−14−9、図3−14−10、図3−14−11に示す。図右側には,上で示した手順によって決定されたS波速度構造と,その探索範囲を示している。推定されたS波速度構造は,本調査での目的の1つ,すなわち地震基盤と考える最下層は明らかに探索範囲内に収まっている,妥当なS波構造と考える。また左側には,解析された位相速度(○印)とS波速度構造から計算されるレイリー波基本モードの理論位相速度(実線)を重ねて示してある。これらは比較的良く一致しており,推定されたS波速度構造は観測から得られた位相速度をほぼ説明できていると考えられる。
今年度の測定結果は,次年度以降に実施される反射法地震探査結果などを参照した再検討が必要と考える。