アレーサイズ(アレー中心点と正三角形の頂点との距離)は解析できる表面波の波長に関係する。しかし,どの波長の表面波を解析するかは探査地域の地下構造に依存する。あらかじめ,それを定量的に見積もることはできない。
そのため,調査地域に既存資料がある場合には,それを参照してS波速度構造モデルを推定し,レイリー波基本モードの位相速度を試算する。これより,最適な周波数範囲をカバーするようなアレーサイズを見積もる。残念ながら石狩平野北部地域では,文献調査の結果S波速度構造モデルを推定できるほどの既存資料がなく,構造も複雑であることが予想されるため,このような手段に頼ることは難しい。過去に行われた微動アレー探査結果によると,この地域では,大学,または大学と民間企業との共同研究により,過去,微動アレー探査が行われ,一部地下構造推定が行われている(例えば,笹谷ほか,2001)。笹谷ほか(2001)の場合,最大アレー半径は2,000mに設定され,低周波数側では0.2〜0.3Hz程度まで,また,最小アレー半径は約100mに設定され,高周波数側が2Hz程度まで,その間の周波数について位相速度が求められ,それらを基に,ほぼ3,000mまでの地下構造が推定されている。また,他の地域における地下構造調査においても,例えば千葉県では,アレーサイズを100〜2,000mとし,その結果,深度2,000〜3,000mの基盤構造が推定されている(千葉県,1998)。それらを参照し,本調査ではアレーサイズを100〜2,000m程度に見積もった。なお,そのアレー半径の範囲内を十分カバーできるように1観測地点に対して小アレー(アレー半径100,200,400mの三重正三角形アレー),および大アレー(アレー半径500,1,000,2,000mの三重正三角形アレー)の2種類のアレーを計画した。
図3−2 微動アレー探査,地震計配置図