2−5−1 地震環境

石狩平野周辺の主要な活断層として,増毛山地東縁断層帯,石狩低地東縁断層帯などがあり,いずれも活動度B級の活断層と考えられている。このうち,増毛山地東縁断層帯は最近の活断層調査から最近10,000年のうちに数回の活動をした可能性が指摘されている。陸域の浅い地震で札幌市に被害が生じたものとしては,1834年に石狩川河口付近で発生した石狩地震があげられる(総理府,1997)。

石狩平野北部地域に直接的に被害をもたらす直下地震の可能性について,笠原ほか(1998)は,最近の地震活動ならびに歴史地震の見直しから検討し,次のような知見を得ている。

1900〜96年に発生した札幌直下における有感地震について,@札幌市内で最大震度を観測,A札幌管区気象台で観測されたS−P時間が3秒以下,を条件として判定したところ,このどちらかの条件を満たす有感地震は34個であった。そのうち,震央位置の推定できた札幌直下の地震は13個であった。図2−29は,札幌直下および周辺で推定できた震央分布である。また,札幌市付近の微小地震観測が北海道大学を中心に行われており,札幌市直下でもかなりの微小地震が発生していることが分かっている。1986〜96年の10年間の観測では札幌直下を震源とする微小地震が36回発生している。このことは地表に現れない地震断層の存在を示していることを意味していると考えられる。これらの有感地震と微小地震の震央を重ね合わせたところ,図2−30に示すように,両者の一致は良いことが分かった。震央は北西−南東方向に分布していることから,分布帯上には同じ走向を持つ地震断層が想定される。

最近の大型建造物建設前の遺跡発掘において,液状化の痕跡が札幌市内のいたるところで発見されている。これはその場所で震度X以上の非常に強い揺れを感じたことを意味している。遺跡調査では時代の異なる3つの液状化跡が見いだされており,年代測定から最も古いのが約2,000年やや遡る時代,次が10世紀以降で,最新のものが1834年石狩地震に相当する。これもまた札幌市直下の地震が繰り返し発生してきた直接的な証拠といえる。

文献調査では石狩地震では津波が発生していないと考えられるため,震源は陸域であったと推定され,石狩地震もこの部分での活動であった可能性がある。最近100年間でM5を含む地震活動が続いていることから,札幌直下には地震ポテンシャルがあり,その活動は現在も継続していると考えられる。