1−2−1 地下構造調査の必要性

平成7年兵庫県南部地震における阪神・淡路大震災は,内陸型地震が都市を襲った場合の恐怖を我々にまざまざと見せつけ,全国どの地域においても「活断層の存在」は地域防災計画策定の基礎となることが広く認知された。また,この地震では「震災の帯」と呼ばれる特異な被害集中ゾーンが認められた。調査・研究の結果,「震災の帯」は,地下深部の地震波速度構造に大きく関係していることが明らかにされた。すなわち,このような特性は,基盤ならびにその上位にある堆積層の3次元構造の特性を把握することにより,事前に評価できるものと考えられる。

信頼性の高い強震動を予測するためには,その地域での活断層の存在ならびに地震基盤から地表までの地下構造を明らかにすることによりはじめて可能となり,信頼性の高いきめ細かな地震防災計画・対策を構築することが可能となる。

市民180万を擁する人口密集地域である札幌市が位置する石狩平野北部地域は,これまでの関連機関などによる調査・研究において,@からBに示すように,「震災の帯」を発生させた神戸地域と類似した地下構造の特徴を有していることが指摘されている。

@ 3,000mにも及ぶ,厚い堆積層を有する盆状構造である。

A 南西部の山地との境界部に,北西−南東方向の構造線があるとする考えがある一方,南北方向の地質構造が想定されている。

B 上記Aと整合的な地震帯が想定されている。

このように石狩平野北部地域は,大局的な地下構造は分かっているものの,地震防災の基礎となる強震動の面的分布などを予測できるような詳細な地下構造はまだ解明されていない。今後,より信頼性の高い地震防災計画・対策を構築するには,石狩平野北部地域の地下構造を解明することが有効,不可欠である。