6−2 課題

地下構造調査の目的は、本報告書「1.2 調査の目的」に述べたとおりであり、予算の範囲内でこの目的を可能なかぎり達成できるように調査を実施することが求められること、及び大阪府の地震防災対策の推進に寄与する調査結果となるようにする必要があった。

この地下構造調査によって大阪平野の深部地質情報は飛躍的に増加した。これにもとづき、防災対策の推進を目的とした地震被害想定に用いる地震動シミュレーションを行うために地下構造モデルの構築を行った。しかし、

@ 大阪平野北西部における兵庫県との県境地域や大阪平野南部には深部地質情報のほとんど得られていない調査空白地域が存在する。

A また、枚方測線や八尾測線で新たに見つかった断層は,その走向が不確定であるため、モデル作成のための情報として取り込めていない。より詳細な地質構造モデル作成のためには、これまでに実施されたすべての反射法探査結果を考慮し、大阪平野を格子状にカバーする総合的な反射法地震探査の実施が必要と考えられる

B 今回の地下構造調査における物性値の情報は神戸市近辺の検層結果をもとに構成しているが、深層地盤の情報の少ない東大阪地域においても基盤岩に到達するボーリングの実施が望まれる。

といった課題は残っている。また、最終年度となった16年度では、「大都市大震災軽減化特別プロジェクト」(大大特)が大阪平野近辺で実施された。同時進行した他機関の調査との連携とデータの取り込みも課題として残った。

作成されたモデルの妥当性を検討するためには、小地震を用いたシミュレーションを行い観測記録との整合性を確認することが重要である。シミュレーションによる波形が観測波形を説明し得ない場合には、観測された波形をもとにその原因を調べる必要がある。しかし、これまでに収集された地震観測記録が少ない、あるいは地震観測点が少ないといったことにより、現状ではどこに問題があるかを推定することがきわめて困難な状況である。大阪平野においては防災科学技術研究所や気象庁の地震観測点、あるいは地方自治体による震度計などの公的機関の地震観測記録が利用可能である。また、ライフライン業者などでも震度計が多数設置されているが、これは震度観測を目的としているため観測記録として残らないのがほとんどである。これらの機関による震度計の観測データの収集体制を整備することはモデルの精度を向上させる上できわめて重要な課題であると言える。また、たとえライフライン事業者の震度観測点を含めることが可能となっても、観測点の密度に地域差ができることが予想される。その場合には地震計配置を考慮した観測点の追加を行うことが重要であると考えられる。