(2)P波速度からのS波速度・密度の推定方法

物性値相互の関連を取り扱う理論式で、よく用いられるものにGassmann(1951)式がある。Gassmannの式は多孔質媒質中の空隙に水分や空気で満たされた場合の弾性波速度の変化を説明する理論式として用いられており、一般の弾性波探査に用いられる周波数帯域でも用いられている。地震動予測で用いられる周波数帯域は弾性波探査で用いられる帯域よりも低い周波数を対象とするが、地震動予測で用いられる速度は弾性波探査結果を用いられることから、地震波の物性値の推定においても有効であると考えられる。

Gassmannによれば、全体の体積弾性率Kは、下式で与えられる。式6

大阪平野においては検層結果をもとに既に松本他(1998)により適用性が検討されている。これによると、深層ボーリングOD1、OD2の結果等に基づいて、

@土粒子の密度ρBSB: 2.65 g/cmP3P

A土粒子の体積弾性率KBSB:54.7×10P10 Pdyn/cmP3P

B水の密度ρBFB:地表水温を15℃として100mで3℃の勾配を与えて深度ごとに算出

C水の体積弾性率KBFB:高温高圧下を想定した水中のP波速度から算出

4つのパラメーターに上記の値を与え、これらの式を組み合わせることにより、P波及びS波速度、密度(あるいは間隙率)の2つのパラメーターがわかれば残りの1つの値を推定することが可能となる。松本ほか(1998)によれば@〜Cで仮定された値を用いて、P波速度及びS波速度から推定された間隙率は、土被り圧で圧密したサンプルより得られた結果に比較的良く一致することが報告されている。大阪平野の堆積層はほぼ大阪層群であることから、@〜Cで仮定されたパラメーターは変わらないものとしてGassmann式に適用するものとした。松本ほか(1998)は同時に、検層によって求まっているP波速度、S波速度と上記のGassman式を用いて間隙率nを求めた結果、間隙率nは深度Dに依存する傾向が見られることから、P波速度から深度Dの影響を取り除くことができれば、P波速度から間隙率nを直接求められるものとし、VBP0Bを深度Dに依存しない補正P波速度として以下に示す関係式を作成している。式7

以上により、P波速度と間隙率nを仮定することができることから、S波速度および密度を推定することが可能になる。