6−5−4 3次元シミュレーションによるモデルの検討

上記の手法及び諸条件によって作成したモデルをもとに大阪平野地域を対象として、3次元差分法によるシミュレーションを実施した。改良されたモデルは今年度の反射法探査により新たな知見が得られた大和川南部地域の基盤岩深度が大きく変わっている。このため大和川南部地域のモデルの改良による地震波形の変化を比較するために、当地域に比較的近くで2000年8月27日に発生した地震を用いて解析を行うことにした。計算は水平方向に100m、鉛直方向50〜200mの不等間隔格子、時間刻みを250Hzで行った。解析に使用した震源パラメータ及び地震波形の比較検討に使用した観測点の配置図等を図6−15にまとめて示した。解析によって得られた計算波形を改良前のモデルによる計算波形および観測波形とをあわせて図6−17に示す。各波形には0.1〜0.5Hzのバンドパスフィルターを施してある。堆積層中のQ値はS波速度(m/s)の1/5として設定し、基盤中の速度構造を表6−3に示すように設定した。なお、各観測点での計算と観測のS波初動の到達時間にはわずかに時間のズレが見られたため、それぞれ観測点の波形はS波初動がほぼ揃うように波形をシフトさせた。また、地表面の3成分粒子軌跡を示すスナップショットを図6−18に示した。

表6−3 基盤岩の速度構造

図6−17から、現状のモデルでは以下の点が上げられる

@ 各観測点とも、1次元的な構造が大きく影響するS波初動付近から10秒程度までの波形は比較的良く一致しており、S波の速度構造としては、まず妥当なモデルになっていると考えられる。

A 尼崎(AMA)や福島(FKS)、森河内(MRG)、弥栄(YAE)などは後続の波形まで比較的よく一致しており震源からこれらの地域に影響を及ぼす構造はまず表現されていると考えられる。

B 忠岡(TDO)、豊中(TYN)の波形はよく一致している。これらの観測点は基盤岩深度が浅く、長周期の表面波の影響を受けていないためと考えられる。

C 上町断層の近傍にある大阪市大(OCU)、堺(SKI)は後続の波群は合わない。OCUは位相のややずれた位置に盆地端によって生成したと考えられる後続波が見られており、モデルの基盤岩の速度が遅い可能性はある。しかし、SKIはS波到達後10秒程度から全く一致しないことから、後続波を生成させる構造が表現されていない可能性が高い。

D 茨木白川(SRK)の後続波はモデルの修正後過大に評価されている。生駒断層北部の構造を大きく変えており、これが影響したものと考えられる。

図6−17 3次元シミュレーションによる観測と解析の速度波形比較

図6−18 3次元シミュレーションによる地表面のスナップショット