5−3 探査結果

収録記録のデータ処理及び解析は、屈折波を用いたトモグラフィの解析フローを基本として実施した。バンドパスフィルタ後の収録波形例を図5−4に、トモグラフィの解析で使用した主なパラメータを表5−5にまとめて示す。なお、データ取得及び処理過程における特記事項を以下に列記する。

測定前:大和川南測線における国道165号は交通量が多く、道路使用許可の申請に際して、所轄警察署より交通渋滞及び事故発生回避のため、昼間作業を避ける旨の指導を受け、夜間作業において実施した。

測定時:測定は、道路あるいは歩道端に受振器(地震計)を一度に最大約7km区間にわたって設置した。設置中においては、パイロン等で作業機材を明示するとともに、作業員の巡回によって機材及び通行人に対する安全の確保に努めた。

全区間にわたり、オフセット(発振点と受振点の間の距離)が数kmを超えるデータの品質は低くなった。これは、大きな交通量等に起因するノイズ、厚い堆積層の存在及び複雑な地下構造によるものと考えられる。また、測点番号380から580の間(CMP番号450から800付近に相当)で受振した記録は、特に品質の低いデータとなった。これは主に地下埋設物(φ1000以上の複数本の工業用水管)の影響と考えられる。

確度は低いものの、読み取った初動走時から作成した走時曲線を図5−5に、読み取った初動走時をデータとしたトモグラフィ解析の結果を図5−6に示す。なお、トモグラフィの解析では、解の安定のために下位ほど速度が大きくなるような条件を付加すると共に、解析の信頼性、特に基盤部の信頼性を高める一手法として、反射法地震探査の解析結果の利用を試みた。具体的には、以下に示す方法で反射法地震探査の解析結果を利用した。

・ 反射法地震探査の解析から基盤岩の上面深度(CMP番号500から800付近は基盤岩上面深度が不明瞭であるため、両端を滑らかに結ぶ東から西へ緩く傾斜する基盤岩上面深度)を推定。

・ 基盤岩より上位の堆積層の速度は、反射法地震探査の解析から得られた速度を利用。

すなわち、反射法地震探査の解析より、堆積層の形状及び速度を固定した上で、それ以深の範囲の速度分布をトモグラフィ解析により再構成した。再構成に使用したトモグラフィの解析の主なパラメータを表5−6に示す。

図5−6は、基盤のP波速度がほぼ5.5〜6.5km/secであることを示す。なお、CMP番号500から800付近にかけて、堆積層として固定した範囲の下部に、速度2,500から3,000m/sを示す部分が認められる。この部分は、先述したように地下埋設物等の影響により、反射法地震探査及び屈折法地震探査の取得データが共に低い品質となった箇所であり、結果の信頼性は低い。

表5−5 データ処理に使用した主なパラメータ

図5−4 バンドパス処理後の波形記録例(大和川南測線)

図5−5 走時曲線(大和川南測線)

図5−6 再構成した速度分布(大和川南測線、反射法地震探査の結果を利用)