水平多層構造の場合、CMPアンサンブル(同じCMPを有するトレース群)内のトレースの反射波走時は近似的に双曲線をなす(2層構造の場合の例を図4−19に示す。左上図中の破線が反射波走時を示す)。なお、双曲線の形状は反射点より上位に位置する層の速度に依存する。水平2層構造の場合、1層下面からの反射波走時は以下の式で表される。
多層構造の場合も、オフセットxに比べ反射面の深度が十分に大きければn層下面からの反射波走時は同様に以下の式で表される。
ここで、vRMSはRMS速度(Root Mean Square速度)と呼ばれるもので、地表から反射面までの間の層の速度を層毎の鉛直走時(鉛直方向の伝播時間)で重み付けし、平均化したもので、第i層の速度をvi、鉛直走時をΔtiとすると以下の式で定義される。
NMO補正は図4−19の上中央図に示すように、オフセット(発振点と受振点間の距離)が、ある大きさの発振点と受振点の組で収録したトレースを、ゼロオフセットでの収録となるように走時の補正を行うもので、補正量はオフセットが大きいほど大きくなる。水平2層構造の場合、NMO補正量ΔtNMOは、上記(1)式より以下となる。
式4
次に、SN比を向上させるため、CMPアンサンブル内のNMO補正後のトレースを重合し、反射波を強調させる(図4−19の右上図)。
上記したNMO補正及びCMP重合を行うため、CMPアンサンブル内の反射波走時より速度を求める。この処理を速度解析と呼び、求めた速度を重合速度と呼ぶ。なお、水平成層構造の場合、重合速度は近似的にRMS速度に等しいと見なされている。
具体的な速度解析は、重合速度の範囲の設定、その中を等分することにより120種類の重合速度を算出、それぞれの重合速度でNMO補正、その後、@CMP重合し、重合後トレースの振幅やパワーの大きさで重合速度を評価する定速度スタック法と、ANMO補正後のCMPアンサブル内のトレースに対し、狭い時間ゲート内でのトレースの相関をセンブランスにより評価する速度スペクトル法を併用する。
図4−19 NMO補正及びCMP重合の概念