(1)H15−B測線における屈折法地震探査

1)探査仕様

屈折法地震探査は、反射法地震探査測線で展開した全チャンネル(597チャンネル)を利用して、測線上の3点で発震を行った。反射法地震探査に比べ展開長が長く、微弱なエネルギーをできるだけ遠方まで記録するために、ノイズレベルの低い夜間(7月29日の夜間20:00から翌朝4:30)に作業を行った。

発震点はいずれも周りに民家のない舗装道路上に設置し、@VP1001:測線の北西端付近 RP30の西200mの舗装道路上、AVP1002:測線中央部付近RP389の広瀬川河畔通上、BVP1003:測線の南東端付近広瀬大橋右岸RP530から200m南の河川敷の舗装道路上、の3箇所を設定した。

屈折法地震探査の調査仕様のうち、スイープ周波数は6−40Hz、スイープ回数はVP1001では100回、測線中央部のVP1002では50回、VP1003では75回である。スイープ長、バイブロサイス台数などその他の仕様は反射法の場合と同じである。

図3−2−2−1−1図3−2−2−1−2図3−2−2−1−3には3点の発震点それぞれの発震記録を示す。北西端の発震記録VP1001では測線中央から南東側ではノイズレベルが高くなっているため、初動が不明瞭になっている。またVP1002およびVP1003では測線の北東端の山側での記録が悪くなっているものの、それ以外では測線全体にわたって初動を追跡することができる。

2)データ解析

横軸に各発震点からの距離、縦軸に初動読み取り値をプロットしたものを図3−2−2−2に示す。ここでプロットした初動読み取り値は、発震記録から読み取った値そのものではなく、測線の両端の受振点であるRP1とRP597を直線で結ぶ仮想測線に投影し、RP1付近を距離の原点として、距離・走時を補正した値になっている。表3−2−2−1には屈折初動読み取り結果(仮想測線投影後の補正値)を示す。

図3−2−2−2の走時曲線では、はぎとり法によって得られた各層の屈折波の見かけ速度も示してある。堆積層中を通る初動の見かけ速度として、測線全体にわたって2.0〜2.5km/sの走時が観測されている。さらにその下の層からの走時として、4.6km/s程度および6.0km/sのの屈折波が観測されている。

速度構造モデルの推定では、まず同じ屈折面からの屈折走時の見かけ速度およびインターセプト時間を読み取り、発震点直下の屈折面の速度および深度を計算する。同時に反射法による深度断面図および速度解析の結果等を参考にしながら、基盤の形状や速度構造を推定し、大局的な速度構造を求める。その後、岩崎(1988)による波線追跡プログラムを用いてレイトレーシングを行い、試行錯誤的に速度構造モデルを微調整しながら理論走時と実際の初動走時を合わせ、最終的な速度構造モデルを求めた。

図3−2−2−3には最終的な速度構造モデルを、図3−2−2−4には各発震点における屈折波の理論走時と観測走時との比較を示す。また、図3−2−2−5−1図3−2−2−5−2図3−2−2−5−3には各発震記録上に初動読み取り値と構造モデルによる理論走時を重ね合わせたものを示す。速度構造は表層800m/secの下に3つの堆積層1900m〜2300/sec層、3000m/sec層、3600〜4200m/sec層、および基盤層5500m/secの4層が存在するモデルである。また基盤までの深度は、測線北西端で約1300m、中央部で約700m、測線南東端で約500mとなっている。図3−2−2−4では理論走時と観測走時とで若干の違いが見られるものの、基本的にはこの5層構造モデルで観測走時を説明できることがわかる。