反射法地震探査データの解析は、図3−2−1−7に示す反射法データ解析の処理フローに従って実施した。その内容について以下に述べる。
@フォーマット変換およびトレース編集
現場で記録された原データ(GDAPS−4 SEGY Format)からSSV8 Format(JGI Internal Format)への変換を行った。発震記録上で不良トレースを選択し、処理対象から除外した。
Aトレースヘッダーへの測線情報の入力
各トレースのヘッダーに対して、発震点・受振点の座標・標高を入力した。
B表層補正解析(Refraction Analysis)
全ての現場原記録から屈折初動走時を読みとり、その値から発振点・受振点におけるタイムターム、および表層基底層速度を未知数とするインバージョン(改良タイムターム法)を行い、表層の構造を求めた。
インバージョンの結果得られた各発震点・受振点のタイムターム値を図3−2−1−8上段に示す。赤色の点が発震点、青色の点が受振点のタイムターム値を表している。横軸は測線の受振点番号である。同図中段には表層速度および表層基底層速度、下段にはタイムターム値、速度情報から計算した深度構造を示す。
これらの結果は、表層第1層の厚さの変化および標高変化に対する走時変化の補正(表層静補正)を行う際に使用される。
C最小位相変換(Minimum Phase Conversion)
相互相関処理後の震源波形は、ゼロ位相型となっているが、後述のデコンボリューション処理によりゼロ位相波形では波形の歪が生じてしまう。これを避けるために、震源波形をゼロ位相から最小位相変換するオペレータを設計し、それを原記録に適用する最小位相変換を行った。
D共通反射点編集(CDP編集)
全記録の発震点・受振点座標を用いて、反射点(発震点と受振点の中点座標)の分布図を作成し、反射点の分布が密な位置を選び、重合測線(CDP測線)を設定した。図3−2−1−9−1および図3−2−1−9−2に反射点分布図および重合測線を示す。
・CDP間隔 : 12.5m(受振点間隔25mの1/2)
・総CDP数 : 979
E振幅補償(Gain Recovery)
反射波の減衰効果を補正するため、t1.2(時間の1.2乗)型の振幅補償に加え、ゲート長 2000 msecの自動振幅調整(AAC)を行った。
Fデコンボリューション(Deconvolution)
発震点・受振点の特性の相違を補正し、分解能の高いデータを得るためのデコンボリューション(ホワイトニング デコンボリューション)を行った。テストの結果、以下のパラメータを使用した。
・ゲート長 : 1000 msec
・オペレータ長 : 100 msec
・ホワイトノイズ : 0.5 %
・予測距離 : 8 msec
G浮動基準面に対する静補正
表層補正解析Bの結果を用いて、浮動基準面に対する静補正を実施した。浮動基準面として各CDP毎に計算される平均標高を用いた。平均標高の計算には各CDP内のオフセット範囲0〜1000mのトレースを使用した。浮動基準面に不連続を生じないように平滑化を行っている。
H速度解析(Velocity Analysis)
定速度重合法(Constant Velocity Stack)を用いて、CDP050、150、165、200、250、300、400、440、500、525、550、575、600、700、800および900において速度解析を行った。速度解析例を図3−2−1−10−1、図3−2−1−10−2、図3−2−1−10−3、図3−2−1−10−4、図3−2−1−10−5、図3−2−1−10−6に、残りは資料11に示す。
INMO補正(NMO Correction)
各速度解析点で決定した速度関数(To,V)を測線方向に内外挿することによって得られた重合速度プロファイル(図3−2−1−11)を用いてNMO補正を行った。補正に伴う波形のひずみを抑制するために最大の波形の伸びを2.5倍とした。
Jミュート
NMO補正後に残存する屈折波やNMOによる過伸長部を除去することを目的にミュートを実施した。
K残差静補正(Residual Statics)
上記Gで実施した浮動基準面に対する静補正では、比較的長周期の補正値は精度良く補正されるが、短周期の受振点・発震点固有の補正は不十分である。そこで、NMO補正後のデータに見られる連続性の良い反射波を利用して残差静補正を行った。補正の際に許される相関関数のラグ値は 4msecとした。
LCDP重合(CDP Stack)
NMO補正、残差静補正終了後、各CDP内の反射波走時は、同一時間に並び、屈折波、表面波およびノイズ等は同一走時とならない。そこで、これらを足し合わせる(重合する)ことで、S/Nの良い反射記録が得られる。重合には、オフセット範囲を0〜3000 mのトレースを使用した。
MF−XY予測フィルター(F−XY Prediction Filter)
重合断面上で連続性のあるイベントを強調し、ランダムノイズを抑制するために、F−XY予測フィルターを適用した。
N最終断面図(Filtered Stack)
重合断面に以下のバンドパスフィルターを施し、フィルター後重合断面とした。
・時間 0 〜 800 ms 10/15 〜 55/60 Hz
・時間 800 〜5000 ms 4/6 〜 35/40 Hz
O時間マイグレーション(Time Migration)
重合断面図上では、反射波は、各CDP位置から反射面までの往復垂直走時がそのCDP位置に表現されている。したがって、傾斜した反射面に対しては、重合断面図上の反射面の傾斜および位置が、真の構造から若干ずれてくる。これを補正し、各CDP直下の構造形態を表す様にする処理がマイグレーション処理である。
本測線では差分法マイグレーション処理を行い、マイグレーション速度は平滑化した重合速度(0ms:100%,200ms:90%,400ms:80%)を用いた。
P深度変換(Depth Conversion)
マイグレーション後の記録に対し、平滑化した速度関数を用いて、時間軸から深度軸へ変換を行った。深度断面の基準面は平均海水面とした。
以上の処理内容のうち、次の5項目についてはデータ処理の品質管理のために、中間段階の記録として、重合数1の断面(100%セクション)を作成している(資料12)。
・初動ミュート
・振幅補償
・デコンボリューション
・浮動基準面に対する静補正
・NMO補正
2)反射法解析結果
図3−2−1−12、図3−2−1−13、図3−2−1−14、図3−2−1−15に、最終的な結果である次の4種類の反射断面図を示す。
・重合断面図
・マイグレーション後時間断面図
・深度断面図
・深度断面図(カラー表示)
なお、反射断面の解釈については、後述する総合解析に記載することとし、ここでは、反射断面の特徴について記す。
H15−B測線の速度解析結果である重合速度プロファイル(図3−2−1−11)をみると、P波速度が2800m/sec〜3900m/secの分布は測線全域にわたり変化が少なく、ほぼ一様である。P波速度が2100m/sec〜2700m/secの分布は、CDP700付近からCDP番号の若い方(北西方向)に向かって徐々に浅くなり、測線北西端の丘陵地(CDP1〜CDP150)で最も浅く分布する傾向にある。また、P波速度が2300m/secより遅いものの分布状況はCDP500付近で変化している。
反射断面(図3−2−1−12、図3−2−1−13、図3−2−1−14、図3−2−1−15参照)からは次のことがいえる。なお、各反射断面の上段には、上から標高、重合数、静補正量および速度解析結果を示しており、CDP400〜CDP450間の重合数が少ない区間は、広瀬川蛇行箇所のために測線がジグザグに設定せざると得なかったことと、十分な発震点数を確保できなかったことに起因している。
・CDP500付近〜CDP979の区間は、連続した反射面が観測できる
・CDP540前後に撓曲がみられ、その左右には断層の存在が考えられる
・CDP1〜CDP500間は丘陵地であり、反射面の連続性は悪くなる
・CDP100付近、CDP250付近およびCDP440〜CDP550間の深部(深度断面では深度1000m前後)に低周波数の強い反射面がみられる