(1)探査の概要

1)調査位置

平成15年度の調査は、宮城県仙台市青葉区荒巻から若林区日辺に至る、北西−南東方向に展開長約13.4km、総チャンネル数597の測線を設定し、バイブロサイス反射法地震探査(P波による反射法地震探査)および屈折法地震探査を実施するものである。測量作業を除く現地調査は、平成15年7月21日〜8月4日に実施した。なお、屈折法地震探査は、7月29日の夜間20:00から翌朝4:30にかけて行った。図3−2−1−1に、5万分の1の地形図に受振測線、発震点位置および屈折法の発震点位置3点を重ね書きしたものを示す。

 

2)反射法地震探査の原理

地表の震源から発生した波は、地層中を伝わり、地層境界面で反射して再び地表へ戻る。これを記録して、反射波の到達時間と振幅を処理/解析することにより、地下の速度構造と地質構造形態(幾層もの地層の重なり具合)を明らかにするのが反射法地震探査の原理である。

図3−2−1−2に反射法地震探査の概念図を示す。反射法の結果は、共通反射点(Common Depth Point; CDP)の反射波振幅を、測線に沿って一定間隔に並べて表示される(反射断面図)。このことにより、地下の地層境界面の形状が反射波の並びとして表現され、地下地質構造形態が理解できる。

また、反射波の振幅は、地層境界面上下の地層の音響インピーダンス(速度と密度の積)のコントラストが大きいほど大きくなるので、反射断面図上の反射面の振幅から、地層の性質についてもある程度推定できる。

3)共通反射点(CDP)重合法

共通反射点重合法の概念図を 図3−2−1−3に示す。測線上に25m間隔に受振器を設置し、測線上の1点で発震して多数の受振点で反射波を同時観測する。この時、同時受振する受振点数をチャネル数と呼ぶ(概念図中では12チャネルとしているが、本調査では240チャネルである)。次に、発震点を別の点に移動して発震を行い、同様に多チャンネルで記録を取得する。この様に発震・受振を規則的に繰り返すことにより、地下の同一の点(共通反射点(CDP))で反射したデータが2重、3重に取られることになる。

このようにして取得したデータに種々の補正処理を行い、足し合わせる(重合)ことにより、測線上の各CDP位置の直下の地下反射波が強調される。足し合わせるデータの数を重合数と呼ぶ(概念図中では3重合、本調査では標準30重合である)。

また、各CDPを構成するデータの補正処理を行う時、各反射面までの反射波の速度情報も得ることができる。

4)バイブロサイス反射法

都市部あるいは市街地において、深度数kmまでの深部を対象とした反射法地震探査の震源としては、大型のバイブレータ(以下「バイブロサイス」という,図3−2−1−4)が最適である。

本調査では、バイブロサイスが放出する連続的な振動(スイープ波形)として、@スイープ周波数 8〜50 Hz(屈折法地震探査では、6〜40 Hz)、Aスイープ長 24 秒を用いており、この波形は現地調査の記録計(探鉱機)でパルス状の波形に変換される。

この波形処理により、都市部での様々な過渡的ノイズ(車両交通・土木工事等)に対して、抑制効果が行われる。このことが、バイブロサイス震源が都市部・市街地で有効である理由の一つである。