a)愛宕橋Brの概要及び仙台市科学館展示資料の状況
愛宕橋Brは、1996年10月、仙台駅南方約2km地点(図3−1−1−2)で掘削された。掘削時のスライム試料は、掘削深度10m毎に採取し、試料瓶に保管された。
また、深度175mから1000m間の9箇所でボーリングコア試料採取が行われ、コア箱に保管された。
掘削終了後、試料は仙台市科学館に寄贈された。その10m毎のスライムの一部を樹脂で固め、300m毎に並べ、ボーリングコア試料とともに展示されている。展示および保管されている試料の状況を資料1に示す。
b)スライム及びボーリングコアの観察結果
愛宕橋Brは、H15−B測線のCDP513付近に位置し、そのデータはH15−B反射断面の解釈の参考となるため、スライム試料を詳細に観察した。その観察結果を、ボーリングコア観察結果とともに、表3−1−1−1に示す。以下、確認された地層について簡単に説明する。
@向山層(深度10〜20m)
灰白色を呈す。大粒の軽石、高温石英を含む。
A竜ノ口層(深度30〜110m)
灰〜帯黄灰色を呈す。シルト岩片、凝灰質砂岩片を含み、貝化石にとむ。石英粒子、有色鉱物粒子を含む。
B亀岡層(深度120m)
灰白色を示す。表面の滑らかな高温石英が主体である。
C三滝層(深度130〜150m)
淡紫褐灰色を呈す。風化褐灰色化した安山岩様の細粒物質を含む。
D梨野層(深度160m)
褐灰色を呈す。細粒凝灰岩片、高温石英を含む。暗灰色硬質安山岩片を含むのが特徴的である。
E綱木層(深度170〜390m)
灰白〜暗灰〜褐灰色を示す。砂粒が主体となり、安山岩片、細粒凝灰岩片、石英、普通角閃石、輝石、黒雲母を含む。
深度250〜270mに暗灰色の硬質粒子を多量に含む。
F旗立層(深度400〜550m)
暗灰色を示す。深度400mから石英粒子・砂粒主体の試料であったのが、急激に細粒分、泥を主体とする試料に変化するため、旗立層に入ったと判断される。
砂粒、細粒分・泥主体であるが、玄武岩片、やや円磨された石英、花崗岩片、デイサイト片を同時に含むのが特徴的である。
G高舘層(深度560〜780m)
赤褐色粒子が特徴的で、暗灰色、淡緑灰色粒子が混入する。スライム全体としては特徴的な赤褐色を呈する。
変質安山岩片主体で、試料の色はこれを反映していると考えられる。580〜600m間に花崗岩細礫を含むが、茂庭層との指交関係を示すものとも考えられる。
H基盤岩(深度790〜800m)
暗灰色の片岩よりなる。
2)ホテルモントレ温泉ボーリング(モントレBr)データ
a)モントレBrの概要
モントレBrは平成15年に掘削された。H7測線1の北側約130mに位置する(図3−1−1−3)。
モントレBrでは、掘削深度10mから200m程度毎に1試料のスライムが採取されており、合計34個のスライム試料が保存されている。この試料は、愛宕橋Brのように、掘削長10m毎に採取されたものではなく、地層の変わり目付近で採取された物で、採取深度は一定間隔では無い。基盤岩のトップは深度622m以深に存在する可能性があるが、深度622〜830mの試料が1つの試料瓶に収められているため、その深度は特定出来ない。このため、総合解析ではモントレBrのデータは使用していない。表3−1−1−2にスライム試料を観察した結果を示す。また、資料2にスライム試料の近接写真を、資料3に試料番号27〜34から作成した薄片試料の岩石顕微鏡観察結果を示す。
b)スライム試料及びボーリングコアの観察結果
反射断面解釈には使用しないが、以下に確認された地層について簡単に説明する。
@仙台中町段丘堆積物(深度0〜8m)
灰〜暗灰色を呈す砂礫層である。安山岩片、玄武岩片主体で、石英、凝灰質砂岩片を含んでいる。
A竜ノ口層(深度8〜28m)
淡緑灰色を呈す。砂質シルト岩片、泥岩片からなり、酸化鉄を少量含んでいる。
B亀岡層(深度28〜67m)
淡灰〜黒色を示す。深度51〜52m、66〜67mは、亜炭主体の試料で、52〜59mの試料の一部は亜炭層を挟んでいる。
その他の試料は、石英を主体とした砂粒からなる。特に59〜66mの試料で、表面の滑らかな高温石英が特徴的である。
C三滝層(深度67〜84m)
灰〜淡黄緑灰色を呈す。風化・粘土化した凝灰岩、安山岩からなる。
D梨野層(深度m)
本ボーリング試料には、梨野層は確認されなかった。
E綱木層(深度84〜420m)
淡灰〜暗灰〜褐灰色を示す。石英粒子及び砂粒が主体となり、安山岩片、細粒凝灰岩片を含む。
・130〜161m;軽石粒子を多量に含む。綱木層上部の凝灰岩と考えられる。
・161〜169m;構成粒子は、綱木層のものと考えられる。黒色(安山岩)粒子 に富む。
・192〜236m;硬質の黒色粒子のほかに、多種の粒子が存在し、混入が考えられる。
・236〜264m;多種の粒子が存在し、混入が考えられる。
・285〜336m;石英、安山岩をはじめ、多種の粒子が存在する。
・336〜357m;構成粒子は、綱木層のものと考えられる。
・357〜420m;構成粒子は、綱木層のものと考えられる。
F旗立層(深度420〜622m以深)
本層の基底は、深度622m以深に存在する可能性があるが、深度622〜830mの試料が1つの試料瓶に収められているため、その深度を特定できない。
灰白、暗緑灰及び褐灰色を呈しており、細粒凝灰岩、高温石英、凝灰質砂岩、砂粒、玄武岩片等が観察される。
・420〜494m;旗立層最上部の凝灰岩と考えられる。細粒凝灰岩主体。
・494〜515m;旗立層としては粒子が粗すぎるため、混入が考えられる。
・515〜571m;旗立層基底の凝灰岩。細粒凝灰岩主体で、酸化鉄片を含む。
・604〜618m;多種の粒子が存在し、混入が考えられる。
・618〜622m;多種の粒子が存在し、混入が考えられる。
G高舘層(深度622m以深)
本層は、スライム試料に含まれる安山岩質凝灰角礫岩片から判断して、深度622m〜830m間に存在する可能性があるが、深度622〜830mの試料が1つの試料瓶に収められているため、その上下限の深度を特定出来ない。
H基盤岩(深度622〜830m間に第三紀層の基底が存在)
・622〜830m;粒子は、スレート劈開が発達しているような岩起源と考えられ、基盤岩と考えられる。622〜830m間に、第三紀層の基底が存在する。
・860〜931m;基盤岩(緑色岩)
・931〜950m;多種の粒子が存在し、混入が考えられる。
・950〜1000m;利府層泥岩と考えられるが、安山岩片も混入している。