スペクトルの形状に関して、1秒より低周波成分について、多くの観測点で実記録と合成記録でフィティングが良好であったが、MIE009(松阪)については、周期2秒以下の高周波成分が幾分過大評価されている。この傾向は、一次元解析(1次卓越周期が2秒弱から0.5秒弱に変化)でも見られていて、これを補正するために、松阪観測点の基盤深度を70mまで浅くした。今岡(2001)などによれば、MIE009(松阪)に近い松阪市役所でのH/Vスペクトル比の卓越周期は0.3〜0.4秒程度とされており、今回の解析結果と整合している。現状の、松阪市周辺における地下構造モデルを、図3−4−34に示す。図中には、各点近傍で得られている常時微動解析結果によるH/Vスペクトル比の卓越周期を併せて示した。微動アレイ観測点(No.15)の深度約400mから、松阪観測点(深度70m)にかけて基盤を急激に浅くする構造になっており、局所的な重力異常、単点微動解析結果、地表地質などと整合的である。ただし、伊勢平野南部周辺には、反射法データなどの物理探査データが十分にないため、三次元的な深部基盤構造には不明な点が多く、この地域における地下構造モデルの再検討の余地が残されている。